怪談収集 ももも

イタチ

第1話

岩の怪

私は急いで山を下る

もう蝉の声が大きく

つくつく

と先程と違う

夕日が暗くなり景色ががらんと変わり始めた

私はその年友達と夏休みを使って

私の母方の実家に旅行に来た

そこで冒険と称して裏山の砂利道を歩いていたのだが

途中立て看板の奥に

岩に穴があいており

鍾乳洞のように感じられた

私達がその穴に入ると

ひんやりと涼しく

奥から風がながれているように感じられたが

暗く奥は見えない

私が友達に声をかけようとしたとき

返事はなくなっていた

私はしばらく大声を出した

すんでいるところでは出したことの内容な

最初は恥ずかしかったが

いよいよ大きな声が出た頃には

何かとんでもない事が起きている気がして

イヨイヨ泣きそうになったが

返答はない

暗闇は変わらず

私は急いで元来た道を

何度もこけながら走る

ズボンは泥だらけであり

家に着いたとき

何処に行っていた

とその様子に怒鳴られた

急いで友達が消えたことを言うと

何処だ

と聞かれ鍾乳洞だと答えると

明らかに顔色が変わる

鬼の口に入ったか

とそう呟く声が聞こえた

あそこには行って消えた奴が何人もいる

友達のおばあちゃんはそう言うと

急いで家に入っていった


村に人と鍾乳洞に行くと友達が立っていた

どうしたときくと

私を捜しに私のおばあちゃん達と来たのだが

洞窟ではぐれ

表に出たときしたから上ったのが見えたという

そのあと五日ほど滞在したが

何もそれ以外は起きてはいない




髪の長い人形がある

それは都市伝説怪談客寄せいろいろあるだろう

中にはそれが幸運のお守りとも言う

僕が持っているものは

人形でもなければ偽物でもない

本当の人間の髪である


親友にゆみと言うオンナノコガ居た

幼稚園の頃から病気がちであり

家が近いこともあり

よく その母親に連れられて

一緒に遊んだりしていた

特に何事も無かったが

あるとき 余り遊びに誘われなくなり

一カ月ほど経ったとき

普段自分から向かわないのだが

彼女の家に歩いて行った

それも2、3件向こうなのでそれほど遠くはない

洋風の家の玄関の横

何時も遊んでいた庭があり

なんとなくそこから見えるかなと

のぞくと

扉が開いており

カーテンの向こう側

布団の中で彼女がねていた

白い布団に長い髪が奇麗整えられて布団の中に入っている

僕は靴を脱いで

その奇麗さにあっとして

そして始めは寝ているのかと思ったが

身動き一つしない姿に

僕はそれが死骸だと分かっていた


気がつく僕ははさみを勝手に持ちだし

彼女の髪を切っていた

手のひらに三本の髪が握りしめられ

何となくその時僕は時代劇で

死んだ人の髪を持っていることを思い出してしたのだろう

しかしばれるといけないから

三本だけ持ち出し

誰にも会わず家に帰った

今思えば髪さえもくれるものでは無いと思ったのだろう

家に帰ってすぐ

僕はおやにせかされるように

葬式に向かった

今思えば一番初めての人間の死であった


しかし問題はそこでは無い

いつの間にかその髪は

子供のせいか消えており

机の引き出しの一番奥に大切に保管していたが

存在しなくなっていた

代わりにふと気がつくと

お味噌汁の中に髪があり

箸で取ると絡まっており

ばらくと三本の髪だったり

風呂場でふと口の中に違和感を感じる

紙かと思ったらひものようで

その細いビニールの線のようなものを取り出すと

それも三本の髪であったり

それが月一回は必ずある

あるとき僕は上京しており

布団の上で目を覚ますと

横に三本黒い長い髪が見えた

僕は金髪の短い髪にそっており

明らかに一本ならまだしも

必ず3本なことに疑問を感じるのです



名刺

私が彼と会ったとき

どこかで彼と一度合っているような気がした

しかし それは名刺交換のときに

渡された名前が

以前どこかで見た気がしてならないせいだと気づいたが 同姓同名は居るだろう

尚も顔を見ても一向に思い出せない

「以前合いましたよね」

そう言われ私はドギマギしてしまう

一度も会ったことは無い

しかし そう言えば名刺を見る前に

顔に見覚えが合ったのは 何故なのだろうか



ポール


冬になると道が雪に埋もれ

道だかそれ以外か分からなくなる

除雪機が通るとき

そこが側溝なのか縁石なのか分かるように

赤く縫った竹をさしてその場所に行ってはいけないのを

雪が降っても分かるようにする

それは私が子供の頃

親子でスキー場に行ったときの話です


その日 雪が朝からちらつくことなく

急いで昨日用意していたスキーウェアー

に身を包み

もこもこさせながら

朝食を食べ終えた親を

押すように車に向かわせました

自分の家から30分ほどの距離に

山が有り

その道を入るとスキー場が有ります

いろんなスキー場が近頃運営をやめていましたが

そこはやっており

私は荷台に積んだ親戚からのお下がりのスキーを見て

ほくそ笑みました

車が出発して直ぐに

ガラスの向こうに雪が垂直に飛んでいき線のようになって残像を残します

実際には止まっているような物なのでしょうが

車の中から見ると全く別のような物で

粉雪がちらついていたのですが

徐々に増える

山道を登り始めた頃

せわしなくバンパーが雪を来ないでというように

左右に払い分けています

そこから窓をのぞいていた私は

親が邪魔そうにしているのも気にせず見ていたのです

しかしどうも様子が変で有り

去年と妙に道が違うのです

私がそう言うと父親は徐々に車を弱め

実際に道に迷ったと思っていたのかも知れません

仕舞いには車が止まりました

どうしたのと母親は言います

道なら一本道で迷う事なんて

そう母が言ったときでした

赤い線が雪の中に転がっていくのが見えます

その吹雪の中 それは何処から表れたのか

飛んできたように見えました

父は車のドアを開け外に出ると

それは新雪の中

赤い竹の筒だと遠くからでも分かりました

それは道に父がしゃがむと転がっており

雪から手で持つと表れ

何本も有るようでした

父が帰ってきたとき

私は前方を見て思い出しました

どうやらこのまま直進していたら

曲がりきれず谷に落ちていたでしょう

日が差し雪の道にはずらり竹が横たわり

誰かのいたずらでしょうか

どちらにしても 私が思い出さなければと思うとぞっする話です



どうやらこのまま進んでいたらガードレールのない

下の崖に進んでいたに違いありません

日が差し雪の道にはずらりと竹が横たわり赤い道のようになっていました


私がそこに出て崖の下をのぞくと

まばらに赤い竹が雪に刺さっており

暴風の吹雪が飛ばしたのかも知れません

人のいたずらじゃなければ

そんな人が居ないといいな

私はそう一人 谷底を見ながらそう思いました




かね

同じ音が何回も繰り返し響き

空気を何度も振動させる

人は己己で自分の一年を振り返り

禊ぎとして鐘を鳴らしそして聞く

それは何年も何年も繰り返され

同じ音を鳴らし続ける

まるでサンタクロースのように

それは挨拶に似て繰り返された


私は身支度をしている頃に一番始めの音が鐘撞き堂に響く

誰かは知らないが近所のお寺の鐘は

自由に打って良いらしく

毎年私は時期を見て108回目に打つことにしている

別段混んでいるわけではないので

一人で何回ならしても怒る人は居ない

私は町中を歩いている間にも

鐘はなる

今で32回だ

以前は張り込みのように

門前で数を数えて程なくして鐘を打ちに行ったが

今は最初の鐘が打たれてからでも時間があると分かりゆっくり行く

辺りはちらりちらりと雪が吹き

ゆっくりと積雪を増やし

辺りを白くしている

私は五十回目の鐘を聞きながら

寺の石段の前まで来た

すれ違うように鐘を突いてきた人が会釈し私も同じ事を繰り返す

「ゴーーォ」

鐘の音がする

徐々にではあるが数が少なく詰まってきた

私はゆっくりであるが

徐々にスピードを上げ

石段を転ばないように上がる

85回

私が山頂に着いたとき

辺りには誰もおらず

ライトに照らされて

後は雪に埋もれた小さな穴に蝋燭があり

鐘撞き堂を照らしている

私は辺りを見渡し石段も見た

誰もいない

私は急ぐように

鐘撞き堂のしたまで行き

そして鐘を見た

青銅のような青黒い大きな鐘の前に

木の筒が宙づりにされ待っている

鐘は冷えると割れやすい

注意書きを見て私が石段を登ろうとしたとき

音が聞こえた

鼓膜をつん空くような鈍い振動

それは間違いなく鐘の音であり

近所の別の手良かとも考えたがそれは遠く明らかに近くの音であり

風かとも思ったが風一つなく粉雪が落ち

撞木も揺れていない

私が一段階段を上がると

確かに大きな音で鐘が鳴る

何なのか

それは明らかに早く

とても早朝や夕方 除夜の鐘などで聞くような早さではなく

かじなどで聞く早鐘のような早さだった

私は怖くなり辺りを見渡すと

遠くの方で赤いライトが見え直ぐにそれが

煙から火事だと分かる

私は図書館と思われる場所を見ながら電話をすると

ピッタリと鐘がやんだ

辺りはシーンとしており

先程の音が嘘のようにない

私は自分の聞いた音が気のせいでは

かじなどなかったのではと振り返るが赤々と燃えている

遠くの方でサイレンの音がする

私はさてと

と言うと

撞木からぶら下がる綱を手に取る

さて


私は鐘を打ち終えた

ちょうど百八回目である

私はほくそ笑みながら石段を下ろうとする

先程の火事は鎮火したのか赤い光は見えず白い煙だけが遠くの方でわずかながら見えた

「ゴーーンン」

背後で音がした

人間の欲望は百八つでは収まらない

よく効くフレーズだ

背後を振り返ると誰もいない

人間の欲望は果たして何回の

鐘の音に変換されるのだろう

鐘は石段を降りても

一定の数で鳴り続けていた

私は200で数を数えるのをやめ

走り去る消防車を眺めながら家路に付いた。



じゃぐち

その家の蛇口は水が出ない

どこかで詰まっているのかサビのせいか

は知らないが 庭に面したその蛇口は

一向にしずくさえ垂らさない

しかし漏水をしているわけでもないようで

水道量金が高いと言うことも無く

ごく普通の物らしい

一度水道屋に見てもらった事があるらしいが

首をかしげるばかりで理由は分からないらしい

工事するにしても高く

さして多く使うわけでもないので

そのままにしていた

ある日 裏庭にさしあたると

何か水音のような物が聞こえる

川があるわけでもなく

水が出しっぱなしになっていたらもったいないと

あの蛇口のことなど等に忘れ

角を曲がると

壁に埋め込まれたように設置されている「字型

の蛇口から大量の水が流れていた

それは赤黒く

建物の陰だからとい言うわけでも無く

サビかと思ったが

足元に流れた血は

白いスニーカーを粘着質に濡らし

熱い空気が独特の生臭さを流し続けていることに気づかせる

まるでそれは足下に張り巡らされた水という名の血管をせき止めた結果 破裂し濃い液体が蛇口から噴出しているように見えた

生臭さに顔をしかめながら

前に進む

これは明らかに水が錆びた臭いではない

生物的有機物のまさしく

水と言うより血だ

私は栓を止めようと一歩前に進む

土にぬるりとした感覚があり

気を抜くとこけそうだ

しかしこれは一体何なんだ

何故急に吹き出した

いやまず この液体は本当に血液なのか

私は徐々に近づきそしてようやくゆっくりと蛇口をひねる

それはその時だった

わずかな揺れを感じ自身だと思うまもなく

何かが地面から跳ねた

それが蛇口のホースから水が出るように

頭上に上がっていた

私は粘着質の何かを払いのけながらその時ようやく

血液らしきなにかが地面から地上に吹き上がっているのではと認識した

果たして錆がたまるとこんなことになるのだろうか

私がそれが鉄ではなく生物の死骸の油田だと分かるのは後のことだ


コトリ


その座敷にはお面が何時も飾られている

何の変哲も無いただのお面であるが

どう言うわけかコトリと音がする

それは別の部屋にいたり

お面を見ていたり

ふとしたときに

そのお面の方から音がする

別段音の鳴るようなものではなく

ただの紙で出来ている

落ちるわけでもなく

そこから動かない

回りにも音がしそうな物はない

ただ 音が繰り返される

何なのか良く分からず

テレビに応募してみたが

今の所 反応はない



サイト

携帯に蓄積されたストアー情報の中

私は黒い四角のアイコンとなり

薄っぺらい画面に映し出している物を見ている

それを導入した覚えも記憶も無く

契約したこともないのに

画面に映っている

と言うことは

始めからあるのか

それとも後から追加で導入されたか

どちらにしろ私は軽い気持ちで

その部分を押した


世界は広いが現在はそのミニマムな形を標準としている

人がデーター化したとき

それのサイズは米粒よりも大きいのだろうか

いや体積に意味を持たなくなったとき

人はようやく現実からの離脱を手に入れるのではなかろうか

私はずらりと並んだケースの中

何万もの脳が浮いている水槽を見る

それはとある独裁者が始めたことだが

いつの間にかオーソドックスなことになっている

それはある意味不死であり

幸福であり

なおかつかなりの低予算で運用可能だ

平等かつ資本経済の行き着く先

それは生物的でも愛でもない

金を配られた結果のディストピア(敗退)

私は電源を落とそうとしたとき

超防火防塵耐震壁が振動を繰り返し裂け始めた

それが内部に突き出たとき

私は驚愕する

この黒い箱に巨大なミミズのような物がめり込んできている

それはまるで



うみ

私は小さい頃から膿みやすい

こけたでけでも凄く膿むし

擦り傷虫刺され刺等々

ほんとうにめんどくさい

きっと免疫力が弱いのだろうか

何時も消毒液を持っていて

鞄に潜ましている

今日も見送られて家を出ると

そのまま職場のペットショップへと向かう

何の変哲も無い道駅電車

吊革につかまると

日頃の疲れか肩が張る

最近いつもそう言えば双だ

職場に入ると

今朝方届いた魚の状態を確認しながら

バーコードを読み取っている

アルバイトの後輩の姿がいた

「杉高君 おはよう ご苦労さんです」

彼はいえいえと首を振ると

作業を継続する

移動という大きなストレスに

魚が最も大変な時期だ

一刻が大事なのだと彼は思っているのだろう

私は鞄を置くと

私服を着替えスーツから制服に着替えるとエプロンをした

彼は黙々と作業している横を通り過ぎ

雑多な掃除や水槽の見回りを行っていると

急に痛みが走り

私は背中に手を当てる

何か痛みの原因かわずかな盛り上がりがあり

私はそれに思い当たりがあった

ニキビが残りそれが膿に変わると

こんな痛みと炎症そして違和感が手に付く

私はちょっとすいません

と彼の横を通り過ぎ

控え室に戻ると

一式を鞄からだし

手で背中をまさぐり痛みの部位を

縦横斜めにつまむ

すると痛みの中ようやく皮膚が割れ

ニキビか膿か分からない物が飛び出すと思ったが

それは手に辺り

シャツから床に転がった

如何したんです

彼が言った

私はそれを手に持って驚いた

それは逃げ出すたとき等に鳥などに埋め込む

gpsの小型チップのカプセルよく似ていた

もしかしたら誤って落としていた物を偶然拾ったのかも知れない

「いや、膿からカプセルが」

彼は興味深そうにカプセルを見て

それがうちが取り扱っていない種類だという同意見

そして番号からこのペットショップだと言うことを話していたが

パソコンを見ていた彼が妙な声を出した

「主任 数百個のGPS信号が

何故かうちに止まってます

生体もいないんで 予備とか合ったりします」

私は急いで彼に近寄り画面を見る

小さな点が重なり合って良く分からないが

ずらりと発信番号が上から下の方まで並べられて表示されている

私は急いで画面を自宅のマンションに向ける

地図上

何故か

膨大な番号が並べられ

識別順に表示し続ける

どうやらそこには

数百匹分のペットのGPS小型カプセルが

動物を飼っているのか有るらしい

私は杉高君の横をすり抜けて電話をする

「おっおい お前」私の声はかすれ

何かからだがうずき始めた気がした

膿んでなければ良いが

その目線は机のセットを横目に見ている



作られ人工の髪は

成分こそ人間だが

その作業は手作業だ

黒金色水色白

染められれば虹色よりも多いだろう

それら全ては死骸でもあり思いでもある

私は鈴が結び付けられた髪を鳴らす

チリンと

偽物の有機物は作られた動作で泣く


「いらっしゃいませ」

店内は明るくクリーム色が多い

雑誌が置かれたラックに香料が飛び交う空間

足元には切られた髪が散乱し掃除している

私は待合室に居ながらにして

醤油の全てという雑誌を読む

「いらっしゃいませ」声がする

私は雑誌を読みながらソファーの隅に移動するが

業者なのか倚子に座ることはない

私は本よ読む

半分ほど進んだ頃か

「いらっしゃいませ」

又声がした

試しに振り向くが自動ドアも開いていないしかし声だけはする

そう言えば店内に

bgm代わりにラジオの曲は流れているが

客の雰囲気がしない

居るのだろうか

私は雑誌が後数ページであったがためしに立ち上がり

覗いてみる

確かに動いていて働いているようだ

私は席に座り直し雑誌を開く

髪の切る音が聞こえる

そう言えば先程から聞こえるが

「ありがとうございました。」が聞こえないのは何でだろう

偶然か

そう思った私に店員の方が

コチラにどうぞ

と呼ぶ声がした



田中さんは居ません


事務所に行くと無機物な倚子と山のように書類類が積まれた机が理路整然と並んだ吹き抜けの1階がある

皆忙しいのか暇なのか同じように倚子に座り何かごにょごにょと机にうつむき隠っている

私は受付と書かれた看板の下受付と書かれた立て札の置かれたカウンターのような机の前に立った


あのすいません 田中は いますでしょうか

私は数十回にも及ぶ同じ言葉を言語を意味を繰り返す

夫は毎朝出かけ出勤を繰り返している

リストラ等に、あっているわけでもないらしく

出勤はしているらしい

しかし

お昼時でもないのに

時計は午後三時を指しているが

今居ないという

その七三に腕当て黒い四角い縁の太い眼鏡の奥の

どんぐりのような目が此方を向いて


田中は今 外出しておりましていません


と昼過ぎと同じ事を言っている

主人は外回りをしているのか

別段口数も多くはないが

げっそりとするわけでも

笑うわけでも無い主人

日に焼けているわけも

シャツが汚れているわけも

無味無臭な男であるが

どこに今いるのだろう


今、主人は何を


男は先程と同じ目で私に言う


田中さんは今居ません




私は車の中彼を待つ

いろいろな人間が六時になるとまばらに出てくる

こんな事を始める切っ掛けは単純に

いつお弁当を忘れた物を届けても

一回目も二回目も三回目も居ない

始めはただ

次はまあそんなもんと

しかし三回目以降は何かしら怪しく

彼に聞いても


まあ 忙しい


の七文字でおしまい

私はふと気になり

この日 出かけてしまった

しかし 夜が終わる午前零時になっても

出て来る様子はない

もう先帰ってしまったんじゃないか

私は携帯電話を見るが着信はない

家に車を走らせると

電気は消えている

もうねてしまったのか

家の鍵を開け中に入ると

背後で音がした


ドアノブが回り扉があく

そして何時もの無感情な声で

短く

ただいま

と言う声が聞こえた

間違いなく夫である


何処行ってたの

夫は短く言う

まあ 忙しくて と




サイト


そのサイトに入れなくなったのはつい先日のことだ

怪談の投稿サイトで2000頃から開設しており

主が自分で選びそれを形を整えた環境で提示している

中々面白い話が多く

利用していたが

ついこの間

見るとリンクが見つからない

ささやきの囁き

と言う画面タイトルが見つからない

リンクからは さき程から何度も押すが

入れないし繋がらない

仕方なく周辺を見るが

ブログが閉鎖された

uRが変更された等の記事も情報も出て来やしない

仕方なしに画面から目を離したとき

思い出す

今から自分が作ろうとしていたことに




どーなっつ


そのお菓子は熱伝導率を優先するために真ん中にぽっかりと穴があいている


私はコンビニで安売りのドーナッツを買い

車で食べていた

深夜の国道をぼーと眺めながら

3個目に手を伸ばす

チョコの上に小さなカラフルな別のチョコが乗っており 恐ろしい甘さのダブルパンチが生地と伴に暴れる

それでも私は道を走る車を見ている

三個買ったドーナッツは

夕食を食べていない私の胃に収まり

袋を片づけようと助手席に乱雑に手を伸ばすと

手応えがある

何かとライトを付け見ると手の上にまだ開かれていないストロベリーチョコチップドーナッツが未開封のまま手の中にある

私は食べあさった袋とレシートを見るが

三個ではなく四個と書かれている

仕方なく袋を開け最後の一つのドーナッツを平らげる

私はゴミを掻き集め捨てようとしたが何か違和感がある

それは財布の形では無くしっとりと軽くも重い柔らかさと硬度を持っていた

先程確認し忘れたのだろうか

だとすればもしドーナッツだった場合

私は返しに行く必要性が出てくる

試しにレシートを見ると

四と書かれている

そうだよな

っよんン

私はもう一度見ると

50円かける4

合計200円の文字がしっかりと黒い文字で印刷されていた

しかし見間違えていないと思うが

レシートとドーナッツはある

試しに他にもレシートとドーナッツが

隠れ潜んでいないかと探すが

塵一つ無い

仕方なく袋をしっかり片づけドーナッツを食べ終えた私はゴミをコンビニに出して戻ってきて驚く

助手席にレシートとドーナッツが座っていた

私はつい目を見ひきらき考える

写真を撮ると

五かける五十えん

合計が250円のドーナッツ

とピスタチオのかかった緑の気持ちの悪いドーナッツの中身の入った袋

私はアクセルをブレーキを引くと戻して

エンジンを吹かして踏む

幸いどおろには何もおらず

信号も青であり私はギアを変えアクセルを踏むが何か

音がしてぐしゃりと言う感覚に襲われた

ブレーキを踏むがそれも同じ 音と質感

なんとか止まり

足元を見ると

潰れた袋が

みえた

それはオールドファッションであり

空気が抜けてぼろぼろに

なっているようであり

二つの袋を拾い上げ

食べる私の横に

何かがある気がする

そのとき

窓をノックする音が聞こえ驚く私

私は窓の外に制服を着た

先程見覚えのある店員の顔が見える


だいじょうぶですか


私は手を上げようとして何かグシャリと音が聞こえた




流れ星

暗い夜道を明るい画面を見ながら歩いている

頭にいしがぶつかっても人はよける術を知らない


(午後六時民家に衝突した隕石は家主

田島公平さん56才の頭を粉砕した後

電気をショートさせ家を全焼するという事故を起こしました)

そのニュースが自分の町だと知った私が家を飛び出す

塾帰りで付けっぱなしだったライトが

自転車の下の方でうなり声を上げている

場所はここから二つ三つ隣の地区だ


知らなかったのは

サイレンが鳴っても何時ものように火事だと思って昨日はさして気にもとめていない

しかし隕石だと分かった自分は何故かギアもないチャリを夜道に走らせている

事件現場には黄色いテープと数人の大人が立ち話をしている

服装から近所の人だろう

「何でも娘さんも母親も旦那さんを助け出そうとしたけれどもう」

一人が言う

「逃げ遅なかっただけでも」

もう一人が続ける

「それにしても石がなぁ空から」

自分は黒い柱が数本見える土地を見ながら

地面から空を見る

無数に空いたそれはニキビのようで

その内一つは衛星なのか動いている

私は自転車に乗り辺りに隕石がないか考えていた

手元のライトは黒い色しか映さない

「おい大丈夫か」

向こうでトタンに雨が当たったような音の後

鈍い何かが地面に倒れる音がした

何だろう

振り返ると先程の一人の影が動いている

もう一人は居ない

ただその人達の間に

赤い色が見えたが

それはマッチ棒のように直ぐに消える

それがトタンに何かが当たって発火したと思ったとき

頭上には巨大な何かが降り注いでいた





オチル


ながいゆめをみた。


私は病室から抜け出すとゆきの積もる中庭をよそ目にトイレに向かう

消毒液の臭いが強く香る

私は灯りの付いたトイレに入ると

スリッパを脱ぎ

トイレに入った

中は白く奇麗さは上位に入るだろう

公衆便所は汚いという

廊下の寒さとはうらはらに

個室の中は暖房が効いており

ホットラインが文字通り壁の中を走っている

ここなら病室よりも暖かいんじゃないだろうか

などと嘯きながら用をたす

外は手を洗うと

凍るように寒い

気のせいではないだろうか空気も青い

私はスリッパを引くように歩き

自分の病室に手をかけようとして辞める

そのままエレベーターを乗り

三階に上がると西に向かい

一番奥の壁

その前の部屋に入る

鍵はかかっておらず暖房も誰も居ない

そのまま何となく外を見るが中庭の雪があいもかわらず月にてらされ青い

そのまま振り返り部屋を出ようとすると

東塔に戻ろうとして 立ち止まる

誰かいた気がする

今間で誰もいなかった布団の中を

奇麗にたたまれた中に小さな盛り上がりを見た気がする

私は振り返り


どうしたの


声がした

目を開けると目の前に看護婦の姿がある


っあ いえ


私は何でも無いというと

立ち上がりそこがトイレの個室だと分かる

と言うことは

昨日トイレに入ったときねてしまったのだろうか

私は自室に戻ろうとしたが

名札がない

鍵はなく入ると奇麗に誰もおらず

窓の外は駐車場が見える


どうしたの あなたの病室はここじゃ無かったはずよ


駐車場で動く人から目をそらす

そのまま看護婦に連れられてエレベーターに乗ると

三階の西がわの奥の壁の前まで来ていた

名札は私の名前が入っており

開けられるままに部屋に入ると自分が居た部屋そっくりである

窓からは中庭が見え白い雪が相変わらず見える

おかしい

誰かのいたずらだろうか

しかし

証拠なのか布団はきちんとたたまれたままである

私は部屋の中の布団を崩しベッドに入る

誰も居ない部屋

ただ時間ばかりが過ぎる













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