それは永劫のおまじない

 最近、非常に妙な夢を見る。

 微睡の中でもがく夢……いや、別にもがいていはいないのか? 満足に体を動かせない夢の中で誰かが俺に触れている。


『お兄ちゃん、今日もしてあげるね♪』

『湊君。今日もしてあげますね♪』


 この声は……彼女たちだ。

 涼香と由愛……家族になった彼女たちの声が脳裏に響き、俺の体に触れて甘い刺激を与えてくる。

 この夢はなんだ……?

 疑問は多い……多いけれど決して嫌ではない夢だ――落ち着くような、気持ち良いようなそんな夢……目が覚めるといつになく目覚めが良いのが不思議だ。


「っ……」


 そして今日も、俺はこのような感覚の中で目を覚ます。


▽▼


「……え?」


 目を開けた時、彼女が……由愛が俺を見下ろしていた。

 彼女は微笑みながらジッと俺を見つめており、しばらく俺は黙ったまま彼女を見つめ返し続ける……明らかにおかしなこの状況であっても、俺は逆に彼女が傍に居ることに安心を抱いている……認めよう。

 俺はもう、彼女たちがどんな状況であれ傍に居ることに疑問すら抱かず逆に安心感さえ抱くようになった。


「また来たのか」

「いつでもいいでしょ? 私とお兄ちゃんの仲なんだし」

「……まあな」


 確かにその通りだ。

 ただ……少し眠たいので時計を見てみると、まだ6時なので全然寝れる時間……よし二度寝しよう。


「二度寝するわ」

「分かった。私も一緒に寝て良い?」

「良いよ」


 掛け布団を持ち上げると由愛は体を入れようとしてきたが、その前にシュッシュとブレスケアをするように口を綺麗にしていた。


「どうした?」

「ううん、私も寝起きだしちょっと口に臭いが気になったり?」

「ふ~ん?」


 特に由愛から嫌な匂いを感じたことはないんだが……。

 そう言えば今のようなことを涼香もすることが最近あるな……姉妹でそういうことを気にするのかなと思いつつ、腕の中に入ってきた由愛を軽く抱きしめる。


「ふふっ、お兄ちゃんは甘えん坊だねぇ」

「……由愛だけだこんなことをするのは」

「そうだよ。私だけだよね? 後はお姉ちゃんかな?」


 俺はこうやって由愛を抱きしめると安心する。

 最初は恥ずかしかったけれどもう慣れた……父さんも薄々気付いてるし、母さんに至っては俺たちの仲の良さは本当に嬉しいようで常にニコニコしている。


「今日も学校……かぁ」

「そうだねぇ。お兄ちゃん、今日も充電させてあげるよ?」

「頼む」


 俺は由愛の胸元に顔を埋め、その柔らかさを顔全体で感じる。

 一部の人は羨ましがり、一部の人はどうなんだと表情を歪めるこの行為を涼香と由愛は決して嫌だと言わないし、そもそも二人が眠っている俺にこうやって続けたせいで俺もこの行為を普通のように思い始めた。


「よしよし、お兄ちゃん良い子良い子」

「……落ち着くわぁ」


 それからしばらく由愛の感触を楽しみ、ようやくと言った具合に俺たちはリビングへと向かった。

 家族全員で過ごす朝の時間――それが終われば三人で学校へと向かう。


「ねえ湊君。放課後に二人で喫茶店に行きませんか?」

「喫茶店?」

「はい。美味しいお店を友達に聞いたんですよ。本来であれば由愛も一緒にと言いたいんですが部活がありますからね」

「めっちゃ残念! でも二人で楽しんできなよ」

「そうか……じゃあ行くか」

「はい!」


 その約束をした後、途中でコンビニに立ち寄った。

 由愛が飲み物を買うついでにトイレに行ったのでしばらく待つことになり、そうなると涼香と二人になる。


「湊君、甘えます」

「おう」


 今まで、彼女は甘えさせてくださいと言っていたが最近はもうこれだ。

 俺が絶対に断ることがないのを分かっているからこその言葉だが、俺は絶対に断ることはない。


「湊君は何もしないんですか? 私ばかり好きにするのはフェアではありません。また以前のように私の体に触れてくださいよ……好きにして構いませんから」

「っ……」


 一応、ここは外だからと伝えると涼香はぷくっと頬を膨らませて頷いた。


(……段々と浸食されてる気がする……いや、されてるな確実に。だって二人にならある程度恥ずかしいことをしてもそれが普通なんだって思うようになっちまったし)


 それこそ胸くらいなら触っても普通だって思えるくらいに……。

 その度に俺は普通じゃないからいかんだろと自分を自制しても、それ以上に二人がスキンシップを求めてきて俺をダメにする。

 しばらくして由愛が戻り、また俺たちは揃って歩き出した。


「そろそろ夏だけど、どんな風にして過ごす?」

「そうですね……あまり視線を浴びたくないですが、湊君となら海とか夏祭りとか行きたいですね」

「あ、それ良いね! 浴衣とか来て……うふふ~♪」


 海に夏祭りか……確かに行ってみたい気持ちはあるな。

 海となれば二人は水着姿に、夏祭りとなれば浴衣姿に……きっと二人のことだしとても素敵な姿を見せてくれるに違いない。

 そんなことを考えながら歩いていると、ふと強い力で引っ張られた。

 物陰に押し込まれるように涼香と由愛が俺に抱き着いている。


「そんなたくさんの思い出を過ごせるように、もっともっと私たちは湊君と仲良くなりますからね。今よりももっと、もっともっと深く」

「そうだよ。もっともっとお兄ちゃんには私たちのことを知ってもらう――この胸に抱く気持ちも全部知ってもらって、その上で私たちと一緒に居てもらうんだから」

「……………」


 その時の二人の目は漆黒に染まっていたようにも思える。

 それでも俺は頷いていた……だってもう、どんなことがあっても俺は二人の元から逃げるつもりなんてないし、ずっと一緒に居てほしいと願ったのだから。


 二人と親しくなったあの事件、あれが今この時に繋がるようになっていたと言われても不思議じゃない……むしろ、こうなることは決まっていたのかもしれない。

 俺はもう逃げられない……俺はもう、二人に捕まってしまったんだ。

 そして同時に、俺もまた二人を捕まえたんだ――俺と涼香、由愛はどこまで行っても似た者同士……ただただ、その相手が欲しくてたまらないんだ。


「湊君、どうしました?」

「お兄ちゃん?」

「……あ」


 でも……ふとした時に普通の女の子に見えるのも彼女たちの特徴で、そんな姿に俺はもしかしたら……心から惚れたのかもしれない。

 これからどうなるか分からないけれど、俺たちの誰かが離れていく未来は全く想像出来ない……それだけは確かだった。




【あとがき】


ということで、今作はこれで完結となります。

ほんとに忙しいのもありつつ、現実世界でのハーレム物は美人姉妹の書籍作業に力を入れたいなと思いつつ……みたいなのもありますね。


まあそれでも書きたいものが出来たら色々書いちゃうんですが……そこはまあ自分の体力と相談はしっかりしています(笑)


取り合えず直近で書きたいもの……なんかドスケベなの書きたいですね()


それでは最後になりましたが、読んでくださったみなさんありがとうございました!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

男嫌いと有名な姉妹を助けた結果、一緒に暮らすことになり気付けば重く愛されるも甘々な件 みょん @tsukasa1992

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ