【最終回】エロい声でつなぐきっかけ

 前田さんのエロい声は、一定時間聞いた女子を肉食化させるようだ。昨日の感じでは、そうなった女子は自ら積極的に男子に話しかけていたな。


俺は、前から胸が大きい櫻田さんのことが気になっている。だが話す機会がなくて現在に至る訳で…。このままでは、クラス替えする1年後なんてあっという間だ。


そこで、前田さんのエロい声で櫻田さんを肉食化させる。それによって、俺に話しかけてもらう計画を立ててみた。


……他力本願だけど、きっかけぐらいは力を借りても良いだろ?

それぐらいなら、多くの人も借りてると思うが…。



 昼休みになり、隣の席の前田さんの机周りに友達の女子2人が弁当を持って集まる。俺は自席で済ませるから、狭くてうるさくなるな…。


しかし、彼女が自分の席に居続けてくれるのは好都合。隙を見て声をかけやすい。


…早々に弁当を済ませ、前田さんをこっそり観察する俺。スマホの合間に見てる感じなので、怪しくないと思う。


女子3人も食べ終わっており、のんびりおしゃべりしている。


「…ごめん知美。トイレ行ってくるね」


「私も~」


「はいはい」


チャンス到来だ。女子2人が離れ、前田さん1人になる。声をかけるのは今しかない。ここを逃したら、どうしようか…?


いや、そんな事考えちゃダメだ。目の前に集中しないと。



 「前田さん、ちょっと良いかな?」

女子2人がトイレに向かってすぐ、俺は前田さんに声をかける。


「どうしたの? 神田君?」


「実は…、2人で話したいことがあるんだけど…」


「2人で? 大切な話なの?」


「まぁね…」

俺にとっては重要だが、彼女にとってはどうでも良いんだろうな。


「わかったわ。じゃあ、放課後に最寄り駅で話そうか。さっきの2人は自転車通学だから、一緒にならないからね」


昨日前田さんに付いて行って、学校の最寄り駅から3駅後にある彼女の家に向かったけど、その最寄り駅で話すのか。


帰る手間を考えると、俺もそのほうが楽だな。


「了解だ。話を聴いてくれてありがとな」


「気にしないで」


それから俺達は会話することなく、昼休みを終える。



 放課後になった。一緒に前田さんの最寄り駅に向かうと怪しまれると思うので、俺が先に着いて待つことにしよう。


昨日付いて行った時に、駅に自販機とベンチがあることは確認済みだ。

そこで待機するのがベストだろうな。


……のんびりジュースを飲んで待っていたところ、前田さんがやって来た。


「お待たせ。それで話って何?」

彼女は俺から2人分ぐらい空けて、ベンチに座る。


「前田さんのを聞くと、聞いた女子は積極的になるよな…?」


「その話? 昨日お母さんが散々したと思うけど?」

彼女はうんざりとした様子を見せる。


「すごく言いにくいんだが…、を俺と櫻田さんの2人きりの時に聴かせてほしいんだ」


「…はぁ。気になる人には、自分から声をかけなさいよ…」


今度はため息をつかれた。反論の余地がないのは、重々承知している。


「そうしたいけど、きっかけがないんだよ。前田さんのを聞いた櫻田さんは、きっと俺に話しかけてくれる。そこからは頑張るからさ」


「…それ、私が受けるメリットないよね?」


痛いところを突かれたな。どう言おうか…?


「俺に触られると、気持ち良くなるんだろ? だったら、2人きりの時に触るのはどうだろう…?」


気持ち良くさせるのを礼にしよう。これは俺にしかできない。


「嫌よ! 下心バレバレなんだから!」


マズイ、前田さんの機嫌が悪くなる一方だ。このままでは…。


「とにかく、私は協力するつもりないから!」

そう言って、彼女はベンチから立ち上がる。


「待ってくれ!」

俺は帰られないよう、急いで前田さんの手をつかむ。


「…んんっ♡」

彼女は再度腰かけ、空いた手で自分の口を塞ぐ。


エロい声が漏れるのを防ぐためだ。やはり、俺に触られると気持ち良いんだな…。


「頼む! こんな事、前田さんにしか頼めないんだ! 俺のお願いを聴いてくれたら、距離を置くからさ!」


話してる時も、彼女は体をビクビクさせている。昨日は手が一瞬触れあった程度だが、今はしっかり掴んでいる。気持ち良さのレベルが違うんだろう。


…今のままでは、返答を聴けない。手を放して様子を窺う事にする。


「…はぁ…はぁ…」

息を整える前田さん。


「勝手に触ったのは謝るが、話は終わってないんだから仕方ないだろ」

これで、途中で帰ることはしないと思うけど。


「……わかったわよ。1回だけ受けてあげる」

息を整え終わった後、彼女は了承してくれた。


「良いのか?」

予想以上に、あっさりOKしたな…。


「神田君が櫻田さんに夢中になってくれれば、私に触ることはなくなるからね。…彼女には申し訳ないけど」


なるほど、厄介払いってことか。目的を達成できれば何でも良いや。


「理由はどうあれ、受けてくれて助かる」


「私、櫻田さんの連絡先知らないから、すぐにはできないと思うけど…」


「それでも構わない。気長に待つさ」

男の俺が距離を縮めようとするよりは自然だからな。



 何とか無事に、約束を取り付けた俺。翌日の朝から、前田さんは櫻田さんと話す機会を増やしていく。どこかに呼び出すには、信頼関係が必要だ。


なので、ゆっくり仲を深めれば良い。…なんて思っていたが、昼休みが始まって早々に隣の席の前田さんから声をかけられる。


「今日、私の家に来てもらう事になったわ。だから家に来て」

最低限そう伝えると、彼女は昨日集まってきた女子2人と話し始める。


おいおい。元からどれだけ親交があったか知らないが、もう家に呼ぶ間柄になったのか。前田さんが誘ったのか、櫻田さんが提案したのか知らないが…。


前田さんの家ならば、彼女は遠慮なくエロい声を出せるな。

俺にとって、うってつけの場所じゃないか!



 放課後になった。俺は一旦家に帰ってカバンを置いてから、前田さんの家に向かう事にした。少しでも身軽なほうが楽だからな。


それに、櫻田さんが彼女の家に入るまで俺の姿を見られたくない。

警戒心を抱かせる行動は控えないと。


……カバンを自室に置いて着替えてから、俺は家を出て前田さんの家を目指す。



 前田さんの家に着いた。駐車場に車が2台ともないので、家にいるのは彼女と櫻田さんの2人だけになる。


覚悟を決めた俺は、呼鈴を押す。……なかなか出ないな。そう思った時だ。


「入って」

インターフォン越しに前田さんの声が聞こえた。


許可をもらったので、早速入ろう。すると玄関先で…。


「さっきの呼鈴は聞かれてるから。さっさと済ませるわよ」


家族の帰宅ならば、呼鈴を鳴らすことはない。なので櫻田さんに用件を訊かれたら、彼女は適当にごまかす必要があるな…。


それが面倒だから、短期戦に持ち込むようだ。


「わかった」

俺の返事後、彼女は部屋に戻ろうとするので俺も続く。



 前田さんが部屋の扉を開けて中に入るので、俺も一緒に入る。


「あれ? 何で神田がここにいるの?」

当然の疑問を口にする櫻田さん。


「…神田君、早くして」


「ああ」

俺は前田さんの手を握る。


「ああぁん♡」

彼女のエロい声が、部屋中に響く。


これだけの大音量だ。聞き逃すことはあり得ない。


…櫻田さんは俺に近付き、服越しであるがボディタッチをし始める。


やっぱり、前田さんのエロい声の効果は絶大だな。後は、俺が櫻田さんを夢中にさせるだけだ! 効果が切れる前に、さっさと始めるとしよう…。

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周りを強制痴女化させるエロい声を聴いた俺は、彼女を作ることにした あかせ @red_blanc

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