第4話 エロい声を活かせないか…?

 前田さんのお母さんである、明美さんから聴いた衝撃の事実…。


それは、2人がサキュバスの血を引いていることだ。にわかには信じられないが、教室にいる女子全員をおかしくさせたので、納得するしかない。


他のケースは知らないが、体の相性が良い人に触れると、すごく気持ち良くなるらしい。ついエロい声が出てしまうレベルで…。


女子が前田さんの声を聴いておかしくなったのが、真相なんだとか。


サキュバスは男を誘惑する悪魔だ。にもかかわらず女子をおかしくさせたのは、先祖のサキュバスが異質だったからと言うが…。



 「神田君、納得できたかしら?」

俺の真正面に座っている明美さんが訊いてきた。


「まぁ…、一応…」


「そう言いたくなるわよね」

彼女の隣に腰かけている前田さんが同情してくれる。


「君は真面目そうだし大丈夫だと思うけど、あまり言いふらさないでね」


「わかってますよ。心配しないで下さい」

明美さんに言われるまでもない。


……前田さんが、俺を睨んでいる気がする。“用が済んだんだから帰れ”ってか?

話を聴いたから、これ以上長居する気はないが。


「今日は話を聴かせてもらい、ありがとうございました。そろそろ帰ります」

礼を言った後、椅子から立ち上がる。


「わかったわ。玄関まで送るわね」

明美さんも続けて立つ。


意外にも前田さんも立った。見送ってくれるのか…?


「私は、自分の部屋に戻るから…」


まぁ、そんなもんだよな。別に仲が良い訳じゃないし。


……玄関に戻り、靴を履く俺。


「気を付けて帰るのよ」


「わかってます」

物騒な世の中なのは、重々承知している。


「神田君、それじゃあね」

前田さんは一言だけそう言うと、階段を上がっていく。


「これからも、知美ちゃんをよろしくね」


「はい…」

この件以降、話すとしたら挨拶程度だろうがな。


こうして俺は、前田家を後にした。



 家の自室に戻り、夕食までのんびりすることにした。

それにしても…、サキュバスか。まさか本当にいるとは。


今までそういうのを気にしたことがなかったから新鮮だ。

もしかしたら、いると噂されている宇宙人も俺の近くにいたりする…?


って、それはないか。妄想が暴走したようだ。

…少し眠くなってきた。夕食まで仮眠しよう…。



 翌日登校すると、前田さんはまだ来ていない。他のクラスメートはいるがな。


…女子はいつも通り、おしゃべりしてるように見える。昨日は記憶が残っているかどうか気にする余裕がなかったが、彼女達の態度が証明してるな。


もし覚えていたら黒歴史確定だし、以前と同じようには過ごせないだろう…。


一方の男子は…、女子をチラチラ見る人が多い気がするぞ。やはりあれを忘れるのは難しいよな。俺も一生忘れないだろう。



 話す内容はどうあれ、昨日の件は女子から話しかけるきっかけになったよな。

きっと、多くの男子が喜んだはず。


もし、気になる女子から話しかけてもらえたら…。そう願わずにはいられない。


俺にだって、気になる女子はいる。それは…、胸が大きい櫻田さんだ。


昨日の豹変後の会話から、体格が良い男子が好みなのはわかった。

上原君に脱ぐよう求めたから間違いない。


俺はお世辞にも、体格が良いとは言えない…。だが1対1で話すことができれば、

比較対象がなくなるから、俺にもチャンスが巡ってくるかも?


…って、そんな訳ないか。俺は彼女と1度も話したことがないのだ。どうやって声をかけ、どうやって1対1の状況にする?


やっぱり、そううまくはいかないよな…。



 「おはよう、神田君」

自席で考え事をしてる間に、前田さんが来たようだ。


「お…おはよう」


彼女はカバンを置いた後、既に登校している友達の元に向かって行く。


…そうか。前田さんの力を借りれば良いんだ。


まず、前田さんが櫻田さんをどこかに呼びだす。そこに俺が行き、前田さんに触れれば…。


彼女は触れられた気持ち良さで声を出す。その声を聴いた櫻田さんが肉食化して、俺に対して行動を起こしてくれる…と思う。


2人は女子同士だし、呼びだすのは容易なはず。


咄嗟に思い付いたにしては、良いんじゃないか?

とはいえ、前田さんが協力してくれるかわからんが…。


当の本人は、友達同士で楽しく談笑している。

急ぎじゃないし、前田さんが1人になったタイミングで一応頼んでみようかな。

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