その日からボクは、史たんの父親になった

 1月のある日、“ボク”は第一子誕生の瞬間に立ち合うべく最低4時間半かかる道程を急いでいたが……その途中で「史たん」と名づけられる息子の父となったことを報される。そんな「ボク=おとたん」と家族のそれからを赤裸々に語るノンフィクション。

 なによりおもしろいのは本当に赤裸々な男親ならではの感じ!

 必死で向かったのに誕生の瞬間には間に合わず、いざガラス越しに我が子を見ればなんだか切ない気持ちが迫り上がる。その他にも夫婦の距離感を計りかねて喰らわされたり、赤ん坊のリアルを突きつけられて辟易としたり。

 幸せだけでは語れない、史たんというニューカマーを迎えた家庭のリアルがあって、息子さんとどう向き合い、付き合っていくかを子育ての中で模索していくおとたんのおっかなびっくり感にもまた男親のリアルがあるのですよね。それをこうまできっちり語り上げ、おもしろくしてしまう著者さんの覚悟とエンタメ精神、すばらしい!

 女性はもちろんですが、特に男性におすすめしたい育児譚です。


(「日常の中に潜む非凡」4選/文=高橋剛)