ポイント還元

ポーズ

第1話 チャンジャ

 赤黒くそびえ立つ肉柱が放った悪臭で、キョッキーは顔を歪めた。モニュモニュとした肉を匙でかき分けて、キョッキーは柱の中心にある珍味へたどり着こうとしたが、あまりの悪臭に心を折られ、親指の第二関節あたりまで堀り進んだところでついに消沈した。

そんなキョッキーの様子を見て白夫は「締められた魚のようだ」と思った。


 ここは、港街にある小料理屋。庁から港へ下る一本道と、海沿いの大通りが交わる丁字路に位置する店で、あたりには港や繁華街が広がっている好立地である。以前、キョッキーが密漁の帰りに偶然この店を見つけ、深夜でも賑わっているところをえらく気に入り、それ以降、彼は海に用事のある際には必ず入店しているのだ。



 ある日、白夫は友人のキョッキーの誘いで深夜の密漁を手伝っていた。2人は、この海岸に生息する「ドジョムコウ」を狙っていた。

 灯りも探知もなく足元も不安定な中、真っ黒い海中に海面の上から棒を入れて左右に揺らしながら引きずり、棒先に固い感触を感じた地点に手を突っ込み、取ったものを無差別に袋に詰めていく。

「白夫は手前担当だ」

キョッキーが白夫に簡単な手順と担当を教えると、2人は散り散りにそれぞれで作業を開始した。真っ暗闇の中、黙々と作業を進める2人。時々伸びをしたり腰を叩いたりして、順調に時間は進んでいった。

 2人が往復して開始地に戻ってきた頃、膝下まであった潮はすでに消えており、元いたところよりもっと先まで行ける状態になっていた。



 「ずっと思ってたんだけど…。」

暗闇を歩きながら、白夫は言う。

「効率悪くないか、これ。あまりにも。」「暗いし危ないし、脚も腰も痛いわで効率悪い分疲労も余分に貯まる。見つかるリスクだって相当高まるだろ。僕、逃げ切れないぞ、疲れてるから。」

と白夫はまくし立て、さらに続けようと呼吸をしたところで、










 


 

 






 帰り道、街へと続く林道を2人で歩いている途中、収穫物を詰めた大袋を持っていた白夫は、ふとキョッキーに

「こんな物を持って街にいれば、密漁に感ずかれてしまう。」

「こいつらはそれほど足が早いわけではない。街へ行くなら、一旦こいつらをどこかに隠しておいて、明日の夜にまた取りに戻るほうがいいと思うけど。」

言った。

キョッキーが少し考えた様子を見せた後これに対し

「バレても問題ない。むしろ、それが目的でもある。」

と、どうにも解せない返答をすると、白夫が質問を切り出す前に、そそくさと林の奥へ歩いていってしまった。

 しばらく暗闇を進んだところで、遠くの正面のわずかな灯りが、揺れる葉で隠れたり現れたりしているのが見えた。無事に林を抜けたことを察した彼らは、明るい方向へ歩いていった。だんだんと街が近づいているのを見て排便の気配を感じた白夫だったが、キョッキーは依然として、まるで定常であるかのような態度で、

「したくてもうんこは我慢しろ。あとおしっこもするな。」

などと言うと、白夫の安寧も束の間、「行くぞ」と急かしたのだった。

 街がはっきりと見えたときには、月はすでに山の稜線の向こう側だった。

 「思ったより早くついたな。」

キョッキーは遠くを眺めて言う。その後、後にあるピックアップの定刻までまとまった時間があることを指摘した彼は、「飯でも食べようか」などと白夫に提案すると、そのまま街の方へと歩いて行くのだった。その間、白夫は黙っていたが内心かなり困惑していた。(この格好で...?)

手には大袋。黒く分厚い上下衣装の背中に銃を携えて、腰には装備が3つ4つ。口元は布で覆われ、髪はやや湿っている。

 


 


 




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