歌集「事訳」

綾波 宗水

歌集「事訳」

休日は 書架に吹きこむ 愚痴ひとり 互いにはらう つもる埃を


いつ逢えど 新しきを知る 学友の 懐にみる 幾重もの日々


鳴らぬなら もはや頼りに するまいと 消音装置 スマホはコートに


縁あれば 言われて気づく 間もなくの 別れを前に しどろもどろす


振り返る かつても既に 大切な 最後に贅沢 モ式拳銃



ますらおの 想いを高め 連絡す 数万円の モデルガン持ち


あと少し 言葉が出ずに 駅へ着く 遅延証明 再受験許可


告白し 途端に消える バッテリー スマホは今や 熱々の鉄


メロンパン 当初は甘く 分け合うも 君は気遣い 野菜すすめる


肘置きも 今は二人の 邪魔者か 特等席に 残る黒髪



どうすれば 愛は伝わる 若かりし 詩人の次は 精神医学


薄れゆく 視界の先に いつも照る おやすみの文字 寝落ちを笑う


「味方」だと 悪役さえも 言うのなら 食べごたえをも ざらめの甘さ


これからは 辛さも言うと 約束す 告白自体 しどろもどろで


世が揺らぐ 倒れる間近 駅をで ナイチンゲールの 鳴き声を聞く



なにごとも 知りたく願い 接するも いざ聞く番に 「好き」のみぞ舞う


『苦しい』の 文言届く 休日が 続けど徹す 愛す他には


友人が いないからこそ いつまでも 君に便りを 直通特急


流行りびょう その筆頭に 愛の名も 月日が人を 歴史にぞする



玉藻たまも刈る 乙女の袖の 染みあとや 浮きにふれる あかしと言うらむ


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歌集「事訳」 綾波 宗水 @Ayanami4869

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