第12話 千夜の気持ち

「デートじゃん!」


 帰宅後。十四日の予定を話した千夜は、目を爛々と光らせた姉に迫られていた。


「チョコレート屋の男の子でしょ? いいねえ、初デートかぁ。ふふふ」

「そういうのじゃないって。商品開発のお手伝いだよ。銀くんは、私のチョコ好きをよく知ってるから」

「そうかなぁ? わざわざお店休みにしてまで誘われたんでしょ? それってさぁ。ふふふ」

「もう」


 美紀は自分の恋愛のみならず、他人の恋愛模様について知ることも大好きだった。


「千夜、毎日お店通ってるもんねぇ。まぁあんたの場合、純粋にチョコ目的なんだろうけど。こんだけ通い詰めてたら、そりゃあ仲良くもなるよね。ねぇ、正直なところどうなの?」

「どうって?」

「分かるでしょう? 彼のこと、千夜はどう思ってるの?」


 深く息を吐き出して考えてみる。姉の質問の意味は分かっている。


「……お店以外の場所で会うのは、初めてなの」

「うん」

「私、いつもチョコのことばかり見てたから」


 話題もチョコに関することばかりだった。けれど彼と共に過ごす時間が、大変心地良かったのは確かだ。毎朝少しでも早く店に行きたくて、夕方帰る時には後ろ髪を引かれた。それはチョコレートのためだけだっただろうか?


――違うかもしれない。私は銀くんを……


「……分からない」


 認めることを臆しているのだろうか。それすら分からずに、千夜は首を振っていた。


――やっぱり怖い。チョコは簡単に好きになれるのに


 甘い香りの届かない場所で、彼を見たら。


――認められるの? 


 千夜はまだ、確信を得られなかった。

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千夜とチョコと異星人 松下真奈 @nao_naj1031

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