万人向きのエンタメ小説

 書き出しが、あっと驚くほど、目をひいた。
 引き込まれていく感じは嫌いではない。
 文体が、歯切れがよく、読みやすい。
 隙のない構成力にキャラクターが跳ねるような会話を展開し、地の文もストレスなく読める。流れるような書き方も魅力的で、主人公のはつらつとした描写、沸き立つような新鮮さは、思わず笑むほど、すっきりとしていて、応援したくなるような気持ちになる。
 ストーリー小説としては、よくできているけど、深みを出すためには、あるいは普遍的な小説になっていくためには、バランス、もっと、破綻を描くように、曖昧な言葉で、感覚的に描写することがいると思います。
 心理描写を緻密に描いて、エンタメの域を出れば、きっと面白くなるはずです。
 根底から、バランスを崩し、小説を目指さないことです。どういうことかというと、うまくやるのではなく、読みやすくするのでなく、調べるのではなく、破壊して、言葉を探っていくと、私見ながら思いました。そう、言葉の角度を変える、まるで、黒を白いうようなひねくれた感じ方がいると思います。