陽炎啄みてサソリの毒まわる体に軋む骨
肉体の跳ね上がる衝撃に目覚めた憎心の痛み止め
歯痛から蝕まれる手を入れたお前の舌に乗っける私の一つの肉欲
絡みゆく咀嚼温度
絡める毒液、むじむじとむずく性器に剥き出しの情念が擦り合わせる蠅の
菌繁茂す、傲慢な化粧に匂う汗は染みついた心臓の弾力が雄蕊の菊に止まる
風が吹いた。
洗い髪の少女よ
シャンプーに塗り込めた情熱は、麝香の誘因、発芽する邪恋は、横取り恋慕の影の歌。
また風が吹いた。
すると、バス停で待つ。お前が制服のスカートを手繰り寄せて、見せる、魅了の黒い陽だまりが燃え上がる揮発性の性欲、麝香は邪念でまさぐりたい。
こころ、まだ、そこにある。
灯、さしたる、影が、君の影を、重ねて、指が絡む、振り向いて頬は染まる、微笑に止まる蠅は、まるで、君の涙に溺れて、黒い蝶々になった、祈祷の濡れ詩。
あいさんさん ほちょうはあわく ゆきのような くろいべに ながれるこいは しゃそうの そうそう どあがひらいて こいゆきぐもる
剥き出しのわたしに触れるな誰一人 痛くていたくてもういたすぎて
僕はこの短歌が好きです。
作者様が「くらいきもちのうた」と名付けたこの短歌20首。あなたはどんなお気持ちで読まれていますか? 僕は大変申し訳ないのだけど、とても綺麗に見えました。
美しいモノだけが美しいのではないのです。
僕は物書きの端くれとして、「人が埋もれさせている何かを」を探しております。ここに詠まれた短歌には作者様が、躊躇い、狼狽え、隠し、飲み込み、埋もれさせた、そんな何かの想いが湧き出ております。
きっと、とても頑張っている
きっと、とても張り詰めている
きっと、とても無理をしている
きっと、とても……。
そういう埋もれた何かが湧き出た時、溢れんばかりのもう一人の自分を抱きしめて、止めようもなくこの歌は詠まれたものだと思います。
だから、僕はそんな想いの歌を綺麗だと言うのです。
生まれいでたる心の雫は、何色であろうと儚くも綺麗なのです。
剥き出しのわたしに触れるな誰一人 痛くていたくてもういたすぎて
僕はこの短歌が好きです。
皆様、どうぞ宜しくお願い致します。