第111話  鳳凰烈華

「絶華が撃てないって……な、なんでですか!?」


 動揺してるルミアの大声が辺りによく響く。戦闘中の俺にもよく届くくらいの声量。


「説明してくださいよ!」

「うん……。朱雀の奥義とも言える絶華は周囲から大気と魔力を集め、絶大な一撃を放つ技だよね?」


 西木さんの説明はあっている。植物などからも集めれるようにはなってるが重ね重ね同じだ。


「対するバロンの能力は吸収ドレイン。魔力を吸収するものだ」

「まさか、集めた魔力を吸収されると?」

「それもある。さらに言うと、奴は風使い。朱雀よりも風に対してはスペシャリストだ。大気を集める動作そのものを、奴の竜巻で邪魔される可能性がでかいんだ」


 その可能性そのものは俺も想像していた。西木さんの想像は合ってると思う。 


 大気を集める動作は前に比べて速くはなったが、まだタメというか、スキはある。本来ならタメ動作そのものにも邪魔されないだけの風圧が発生するが、バロンにはそんなもの関係なく、どこからともなく竜巻を起こす事ができる。

 奴の竜巻の風圧で、大気を集める動作が邪魔される事で、絶華発動速度は前以上に遅くされる。風の扱い、魔力の風圧、どれをとっても奴の方が一枚上手だからな。


 だが、それを加味しても絶華発動はできると思う。放つのに時間はかかると思うが。 

 ……そこが問題なんだ。

 百花繚乱により奴の吸収能力の邪魔をし、発動のタイムラグを利用して攻撃する、ヒットアンドアウェイ戦法をしてる最中なわけだが、絶華発動に時間がかかるならタイムラグは終わり、吸収ドレインが発動してしまう。

 百花繚乱に魔力を吸われるとはいえ、絶華のような強大な技が飛んでくるならそちらに吸収を使用してくるはず。

 百花繚乱の魔力吸収量より必殺技の絶華の吸収量の方が多い。それでは奴の魔力を減らすどころか増やしてしまう。


 そして一撃の威力の減った絶華なら、奴の烈風槍ゲイボルグで貫かれ、カウンターくらうだけ……


 必ずしもそうなるとは限らない。だがリスクは大きい。それ故に西木さんは撃てないと判断したんだと思う。


「じゃあジリ貧……勝てないって言うんですか!?」


ルミアは回復作業を止め、西木さんに怒鳴るかのように聞いていた。


「それなら……私、助けに」

「邪魔になるだけだよ」

「でも!」

「それでも……朱雀に頼る他ないんだ。今の彼は間違いなく……」


「天界軍、最強なんだから」



 ジリ貧……ルミアの言う通りではある。

 能力は上手く無効化できてはいる。それでも決め手がない。

 このまま百花繚乱を活かしながら、時間をかけ続ければ勝てる可能性はあるがな。


 ――だが、奴の必殺技が発動されれば形勢が一気に変わる。

 発動を許し、直撃を受ければ形勢はひっくり返される。

 なら撃たせなければいいと思うだろうが、あの技は絶華と違い、撃とうと思えばいつでも撃てる。

 ヒットアンドアウェイなんてしてたら撃つ余裕はいくらでもあるんだ。


 ――なら、何故まだ奴は撃たない?

 

 、タイミングをはかってるのだろう。確実に俺を仕留められる確実な瞬間を……


 ……そう、俺もタイミングをはかってる。吸収能力対策その3……

 聖霊と共に開発した。とっておきの新技をぶつけるタイミングをな。


 百花繚乱じゃない。別の決め技だ。

 決められれば、絶華に匹敵するダメージを与えられるはず。


 だが、失敗は許されない……撃てるのは一回きり。しくじれば……終わる。 

 

 放つタイミングは考えてある。バロンがある行動をしたその瞬間が……


 ――勝負!!


「百花繚乱・紙吹雪!」

 

 俺が再び百花繚乱を放つその時、バロンは動く!


「もううんざりです。決めさせてもらいますよ」


 風鎖連撃か!?


 すぐさま身構え俺は動くが……


烈風槍ゲイボルグと、死の風鎖連撃デ・スクリーム同時に放てないとでも思っていましたか!?」


 今まで以上の、特大の烈風槍ゲイボルグと、死の風鎖連撃デ・スクリームが同時に発動された。地に魔力を送る動作もなく……


 特大の槍により、百花繚乱は舞い散り消失していく……。そして前方と後方、いや、360°すべてから鎖と槍が俺めがけて襲いかかってくる。


「チェスで言うところのチェックメイト、ですねえ」


 バロンは勝利を確信して笑みをこぼす。


 俺は……


「その通りだな……


 この時を待っていたんだ!!


 最大限の風圧を飛ばし、俺は全速力でバロンに特攻しかける。その際槍にいくらか貫かれるが、構うものか!

 鎖にさえ捕まらなければ、動きを封じられる心配はない!

  

「いい的ですね!」


 バロンは高密度の竜巻を前方に飛ばす。ヒカリ先生達はこれにぶつかる事で吹き飛ばされていた。


 俺は竜巻を打ち破るために、天に剣を掲げる……大気と魔力が竜巻のように駆け巡り、剣に集中していく……


 この動きは絶華そのもの……


「その技、知っていますよ!!竜巻はかき消せても、烈風槍ゲイボルグの前には……」


 俺は前方の竜巻を破壊するために、集めた魔力をすべて地に向かって放出し、爆発させる。

 それにより壁となってる竜巻は消し飛ぶ。しかし剣に集中された魔力は消えさる。


「な、なんのマネ……?」


 奴が疑問を発してる間に懐に潜り込み……まず一発の斬撃を放つ!


「がっ!!ちい!!」


 斬撃は軽い一撃だ。当然の事。魔力はすべて解き放ったからな。

 だが、構わず俺は連撃!

 何発も何発も斬撃をバロンに向かって放つ!


「おのれ!調子に乗るなよ!!」


 烈風槍ゲイボルグを俺に向ける。だが、奪い取るほど大した魔力は今の俺にはない。だが――


 連撃の最中、奴についたわずかな傷……そこからまた種を仕込み内部から百花繚乱が発動する。

 それにより、烈風槍ゲイボルグの魔力は吸われて弱体化していく。俺から吸い取る魔力が微々たるものしかない以上当然の事。


 弱体化した烈風槍ゲイボルグなら、朱雀聖剣サウスブレイドだけで弾く事は容易だ。

 俺は連撃を続けながら、烈風槍ゲイボルグを弾き飛ばし、無効化する。


「味な真似を!!だが!こんな小さい連撃で!某を倒せるはずない!それに……」


 背後から死の風鎖連撃デ・スクリームの槍と鎖が……


「終わりですね」


 構わず放つ連撃。


「ごっ!!な、なっ!?」


 連撃の威力は、徐々に上がり続けている。


「な!?なん!で!?」

「俺が地に放った魔力……覚えてるか?」

「まさか!?」


 竜巻を破壊するためにすべて放出した魔力……それをすべて少しづつ回収してるんだよ。連撃しながらな。


 吸収能力は、今俺が弾いた事で能力は解除中。次に烈風槍ゲイボルグを放つにはまたタイムラグが必要。そのラグと、風鎖連撃の槍が届く前に!決める!!


 音速レベルの剣速による超連撃!反撃のスキも与えない怒涛の攻撃の雨。

 今やもう、放出した魔力はすべて剣の元に集まっている……絶華を放てる程の魔力が!


 槍が一部、俺の背を貫く!だが、構うものか!!


 最後の全力の突きをバロンの腹部に直撃させる。


鳳凰烈華ほうおうれっか!」


 ――瞬間、剣先から集中された風がバロンを貫く!


「ごばあ!!」


 バロンの体にどデカい穴を開け貫通。奴は血反吐を吐き散らして……

 勢いよく、全身を回転させながら吹き飛んでいく!


「ば、バカな!こ、この!そ、某が!?そんなわけがああああああああああ!!ごはつ!!」


 周囲のものをすべて吹き飛ばしながら飛翔していき……

 バロンの体は内部から引き裂かれ、風と共に跡形もなく、散りと消えていった……


 ……


 途中で俺を突き刺した槍以外は、バロンの死によりただの風へと戻り消えていった。

 決まる前にすべての槍と鎖が俺に届いていたら……負けていたのは俺だったかもしれない。


 奴が強大な吸収能力、烈風槍ゲイボルグを使用し、能力を解いたスキに決着をつける。それが俺の賭けだった。

 ギリギリだったが……賭けに勝てたみたいだな………


 鳳凰烈華。これは連続斬撃をしつつ、周囲から魔力を集め、魔力を一点集中した突きでフィニッシュを決める必殺技。

 絶華には劣るが、連撃しながら魔力を集められるためスキは無し。短期決戦を決めるには最適解の新技だ。


 バロンの吸収能力のタイムラグ……それが切れる前に決着をつけれる超スピードの技が必要だった。それがこの鳳凰烈華だった。


 開発には苦労したが、まあそんな小話はどうでもいい。今は勝った……その余韻に浸りたい。



 ――つづく。


「や、やりましたよ!!神邏くんの勝利!!わーい!!めでたいです!」


「次回 帝王会議。ふふふ。幹部負けたから奴らは会議で大慌てですか」


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