後
四人の娘たち全員が寝静まった深夜に、光明は行動を開始した。
まず、実体化を解いて霊体に戻る。そして、カゼとツキの部屋に侵入した。……霊体であろうと、彼の姿と声は、娘たちには見聞きできるので、細心の注意を払う。
その甲斐あって、無事に眠っている娘たちを見下ろす位置に着いた。水色と黄色の甚平をそれぞれ来た二人が、鏡合わせのように向き合った寝姿が、写真に収めたいほど可愛らしい。真ん中にある例のフランス人形を気にしなければ。
姉二人の忠告通り、カゼとツキは風呂でも食事中でも、人形を手放さなかった。だからこそ、今が最初で最後のチャンスである。光明は、顔を強張らせながら、人形に右手を伸ばした。
瞬間、人形の両目が瞬きをした。
「ひっ」
思わず、声を漏らして手が止まってしまう光明。この隙に、巨大な拳に殴られたかのように、自身の体が真後ろに吹っ飛んだ。
中空で、光明の体は固定される。バタバタと動かせるのは両足だけで、手と首を強く押さえつけられているような感覚がする。
光明はこの上なく焦っていた。対生者に特化した死神が、純粋な霊力勝負では、この悪霊に負けてしまう。ここまで来たのに、この状況から逃げきれる方法がない。
声すら出せない光明を嘲笑うかのように、フランス人形はゆっくりと身を起こし、脇から手を入れて掲げられる格好で浮かび上がる。そのまま、光明の視線の先で止まった。
『サビシイ……サビシイ……』
人形の怨念が、真っ黒なオーラと変貌し、彼女を中心に渦巻き始めた。その中から、悲痛な叫びが、光明の心へと伝わってくる。
『ミンナ、イナクナル……。アキタカラ……、アタラシイノガアルカラ、キミガワルイカラ……ソウイッテ、ワタシヲステル』
すすり泣く音も一緒に響く中、光明の首を抑えている力が、ゆっくりと上がっていく。人間では不可能なほど真っ直ぐな角度になってしまうが、霊体の光明は死ぬことも出来ずに激痛に苦しむ。
『……デモ、カゼトツキハ、チガウ』
だが、光明の娘たちの名前を出した瞬間、人形の声色が和らいだ。相変わらず、光明の首を絞める力が強まるばかりだったが。
『アノコタチハ、ワタシヲ、トモダチダトイッテクレル……。ダカラ、ジャマヲシナイデ』
人形の声色の変化は一瞬だけで、また悍ましいものに変化する。このまま首を引き千切られそうになりながらも、光明は必死に声を出した。
「……まえ、」
『……ナアニ?』
人形が何と言っているのかを知ろうと、首への負荷が一瞬弱まった。光明は、呻きながらも話す。
「名前、憶えてくれてたんだな」
『……ウン』
どうしてそんなことをと、戸惑いを見せながら、人形は頷いた。
「二人のこと、見分けはつくか?」
『コエガオオキイノガ、カゼデ、ナガクワラウノガ、ツキ』
「服の色以外で分かるなんてな。……二人のことが、大好きなんだな」
『……ソウダヨ』
人形の毒気が抜かれたと同時に、光明を吊り上げていた力が解かれた。音もなく床に落ちた光明は、仰向けになったまま少し咳き込んでいたが、また口を開いた。
「それなら、俺が手を出す必要は無いな」
『ズット、ココニイテイイノ?』
「ああ。ただ、一つ頼みがある」
上半身を起こした光明は、浮かんだままの人形から、目線を下に向けた。これまでの騒動など関係なく、カゼとツキはすやすやと眠っている。変わらぬその寝顔を、彼は愛おしそうに眺めていたが、改めて人形を見上げた。
「俺がいない間も、二人を守ってくれないか? この家、霊障とか多いようだから」
『ウン。ヤクソクスル』
神妙な声で受け入れてくれた人形の言葉に、光明は安堵したように頷き返した。
△
「大分険が取れて来たんじゃないか?」
向かいに座る光明が、何の前触れもなくそう呟いたので、ハナとトリは顔を上げた。昨日、収穫の手伝いの報酬として、大量にもらったキュウリを、漬物やピクルスにするための準備を、ダイニングテーブルで行っている時だった。
半月ぶりに堀川家に訪問していた光明も、キュウリの皮むきを手伝わされていた。以前まで、料理をする時は必ず指を怪我していた彼だが、ここ最近は慣れてきて、カーペットの上で遊んでいるカゼとツキの様子を見る余裕も出てきている。
「人形のふぅちゃんのことだよ」
怪訝そうな顔を見せたハナとトリに、光明はそう付け加える。件のフランス人形は、ままごとセットの小さな椅子に座らされて、カゼとツキから同時にスプーンで食事を与えられていた。
「人形の顔が変わるわけないじゃない」
「今も悪霊がどうこう言ってるの?」
「二人の俺に対する険は、いつ取れんのかな……」
納得するどころか、ますます眉間の皺を深くしたハナとトリの一言に、光明は砕けた口調ながら存外に傷ついたというような顔で返す。
半月前、あれほどあのフランス人形が危険だと言っていた光明が、一晩経つと、「大丈夫になった」とだけ言い、その後は全く気にしなくなった。何かきっかけがあったのではと思ったが、ハナとトリはまた眉唾な話を聞かされるのが嫌で、言及はしなかった。
「今も、カゼとツキはふぅちゃんと一緒に学校に通っているのか?」
「そうね、もうすっかり二人の妹って感じよね」
「流石に、お風呂と食事まで一緒は止めさせたけど」
「そっかそっか。仲良しだったら、それでいいんだ」
光明が訳知り顔で頷くので、ハナとトリは胸の内にモヤモヤとしたのを感じる。
オカルト全否定派の二人だが、光明が何か見透かしているかのような言動が、どうも気になる瞬間がある。彼のことを、父親だと認め始めた兆候なのかと、二人はふと思った。
「話変わるけど、俺がいない時のラップ音や物の勝手な移動はどうなった?」
「そう言えば、あまりしなくなったわね」
「言われるまで、気付かなかったわ」
日常的だった現象が、いつの間にか止んでいたことにはっとするハナとトリ。また、光明が「良かった良かった」と頷くので、反発する気持ちが湧いてくる。
「……あなたがこの前買ってきたドローン、全然触れられていないわよ」
「……あの子たちはずっとふぅちゃんに夢中で、残念だったわね」
「え、そこはまあ、別にいいんだが」
シャ、シャッと、鋭くキュウリの皮を剥く音に合わせて、不機嫌そうにつぶやくハナとトリに、光明は慌てる。自分が何か怒らせたっけと焦る彼を見ていると、二人は意地を張っていた自分が子供っぽく感じて、肩の力を抜いた。
「あなたって、いつもカゼとツキが一番なのね」
「自分の気持ちは、いつも後回しで」
「これでも父親だからな。自覚したのはついこの前からなんだが」
照れくさそうに笑っていた光明だが、次の瞬間に、真剣な顔で、ハナとトリを見据えた。
「あと、カゼとツキが一番っていうけど、ハナとトリも一番だからな。四人全員が、一番大切な娘だ」
「はいはい、たいそうなことを言うわね」
「言葉だけは有り難く受け取っておくわ」
「気持ちも受け取ってくれよ」
冷たくあしらいながらも、光明の本心は、ハナとトリにとって嬉しいものだった。育ての父とは似ても似つかない彼だが、すでに心を許しているんだと、ひっそり思う。
そこへ、「「パパも食べてー」と、カゼとツキが目玉焼きの玩具を持ってきて、光明に食べさせようとする。それを食べるふりをしながら、「旨い! 天才だ!」とベタ褒めする光明を、ハナとトリは険の取れた顔で見つめていた。
△
帰りの挨拶をした後の教室で、帰り支度をしたカゼとツキは、三歳上のクラスメイト女子の
「ねえ、この後ヒマ?」
妙に高揚した様子の彼女に、双子は不思議そうな顔をしながらも頷く。日本人形のような格好の少女二人が、フランス人形の手をそれぞれ繋いでいるというちぐはぐな構図にも、クラスメイト達は慣れているので、そこは言及しない。
李のすぐそばにいた、彼女より一つ年下の
「これから、北にある廃ビルに行くの」
「あそこに、お化けが出るんだって……」
「「お化けが⁉」
公園かどこかに行くのだと思っていたカゼとツキは、思わぬ話に驚きを隠せない。しかし、「お化けが出る場所に行く」と訊いて、怖さよりもわくわくが勝っていた。
「カゼちゃんとツキちゃんも一緒に行かない?」
「「行く!」」
李が笑顔で改めて誘うと、躊躇もせずに、二人は大きく頷いた。
「……二年前に、大きな地震があったの、覚えている?」
学校を出て、例の廃ビルへ向かう途中、未音がそっと囁くように尋ねてきた。
全く同じ角度に首を傾げたカゼとツキは、その地震のことを思い出そうとしたが、二年前の記憶は霧の中のようにぼんやりとしている。二人は正直に、首を振った。
「仕方ないよ。カゼちゃんもツキちゃんも、まだ四歳だったんだから」
「でも、本当に大きな地震だったんだよ。立っていられなかったくらいに」
李は苦笑したが、真砂は真剣な顔で訴える。その反応を見て、本当にその地震が怖かったんだろうなと、カゼとツキは想像した。
「でね、その地震の時に、崩れたビルに向かっているの」
「そこで死んだ人が、今も幽霊になって出てくるんだって」
「「えー、すごーい」」
未音と李の言葉にも、怖がらずに、むしろキラキラと目を輝かせるカゼとツキの反応に、クラスメイト三人はむしろ困っている様子だった。真砂が思わず尋ねてしまう。
「二人は、お化けは平気なんだね」
「「うん、平気!」」
だって、私たちのパパは死神だもんと言おうとしたが、これは内緒だと姉たちからも釘を刺されていたので、流石に黙っていた。ただ、彼女たちにとって、幽霊と死神の違いはよく分からなかったが。
「「ふぅちゃんが一緒だから!」」
その為、二人の真ん中にいたフランス人形を、サンドイッチするようにギュッと抱き締めて誤魔化した。それを見て、未音は温かい声で言う。
「三人は仲良しだね」
「「えへへ~」」
「あ、見えて来たよ」
先導していた李が、幽霊が出るビルを指差した。三階建ての、黒ずんだ外壁のビルは、確かに窓は全て外れており、途中で折られたかのように天井近くはガタガタになっていた。
周囲にも建物が少なく、仲間外れにされているそのビルを見上げて、カゼとツキもぞくりと冷たいものを感じた。しかし、前を行くクラスメイト達は躊躇なく入る。
所々欠けているコンクリート剥き出しの階段を上り、現在のビルの最上階に辿り着く。李がドアが開けた先で、コンクリート打ちっぱなしの壁と床、所々に立つ柱が彼女達を出迎えた。
「……見て、あれ」
硬い表情と声で真砂が、この場にいる五人で囲めそうなほど大きなコンクリートの塊を指差す。天井に穴が空いているため、そこから落ちてきたのだろう。その塊の下には、赤黒く変色した血があった。
未音は「ひっ」と小さな悲鳴を上げ、カゼとツキも人形を握る手に力が入る。青白い顔をした李が、最悪の想定を口に出した。
「やっぱり、あの下敷きになった誰かが……」
だが、カゼとツキはその言葉を最後まで聞いていなかった。真砂が見つけたコンクリートの塊よりも、数歩分斜め後ろに、ぽたぽたと落としたかに見える、血痕を見つけていたから。
「「ねえ、お姉ちゃんたち、」」
あれなんだろという一言を言い切る前に、突然辺りが真っ暗になった。
一瞬、停電に見舞われたのかと、五人は思った。しかし、電気の通っていないこの廃ビルで、そもそも現在は夕方で、自分の指先も見えないほど暗くなるなんてありえない。彼女たちはそれに気付いてしまった。
「いやっ!」
「「キャーーーー!」」
「あっ、あああ、」
「み、みんな落ち着いて! 携帯、携帯を開いて!」
パニックに陥った友人たちを落ち着かせようと、李が叫ぶ。言いながら、自分の携帯電話をポケットから出そうとするが、手が震えてうまくいかない。
「……私、開いているよ。でも……」
未音が、喘ぐように呟いた。電池は十分あったはずの携帯電話だが、どのボタンを押しても、沈黙したままで、画面が灯りもしない。
全員が絶望のあまり黙り込んだ瞬間、ううぅと、誰かの呻き声が聞こえた。五人は、声のした前方へと、思わず目を向ける。
人が一人、立っていた。こんな暗闇の中でも、それだけははっきりと分かるような、影の塊だった。
その影の顔辺りから、血が流れ出ている。ぽろぽろと零れるそれは、出血よりも涙のように見えた。
「痛い、痛いよおおおおぉぉぉ――」
大きく口を開けて、影が叫ぶ。ビル全体をビリビリと震わせるその大声に、吞まれてしまった五人は、反応が出来なかった。
「助けてぇえぇえええぇ」
悲痛な叫びはさらに大きくなり、影はゆらゆらと心許なく揺れながら、一歩ずつ、こちらに歩み寄ってきた。
「■■さぁあああああぁあんんんんん」
影が呼んだ名前は、そこだけ雑音になってしまい、聞き取れなかった。ただ、この中にその人物がいないということだけは、確実だ。
近付いてくる影の姿は、遠近法関係なく、信じがたいほど大きくなってきた。このままだと、この影に取り込まれる。全員がそんな予感に襲われたが、足を一切動かせなかった。
「「助けて! ふぅちゃん!」」
カゼとツキは、同時にそう叫んだ。なぜ、父や姉たちのことではなく、二人で硬く抱き締めていたフランス人形を呼んだのか、彼女達にも分からなかった。
それに応えるように、ふぅちゃんが輝き出した。白熱電球のように、眩く、温かな光に、カゼとツキは目を見張る。
ふわりと、カゼとツキの手を離れて、ふぅちゃんが宙に浮いた。そうすることが当たり前のように、真っ直ぐ、悍ましい叫びを上げ続ける影へと向かって行く。
「「ふぅちゃん‼」」
カゼとツキは、ふぅちゃんを追いかけようとしたが、前にいた三人のクラスメイトに止められた。
「危ない!」「ダメ!」「待って!」
李と真砂と未音が、口々にそう言って、カゼとツキの肩や腰を掴む。双子は着物が乱れるのも構わずに、振りほどこうと暴れたが、年上の力には敵わない。
その間に、ふぅちゃんは影と正面からぶつかり合った。影がさらに苦しそうな声を挙げると同時に、ふぅちゃんの放つ光も、当りを包み込むほど大きくなる。
「――――カゼ、ツキ」
全てが白色になる瞬間、カゼとツキは、確かにふぅちゃんの声を聞いた。
「―――――今まで大切にしてくれて、ありがとう。大好きだよ――――」
目を閉じても貫いてくる白い光の中で、カゼとツキはふぅちゃんの笑顔を感じ取った……。
△
「ははあ、そんなことがあったのか」
ハナとトリから、三日前の出来事を聞かされた光明は、目を丸くしてそう返した。久々に訪ねた堀川家で、カゼとツキがふぅちゃんを持ってなく、いつもよりもずっと元気がない理由を訊いてみたところ、姉達の自室で連れて来られた。
リビングでテレビを見ている妹達のことを気にしながら、ハナとトリは頷く。また悲しい気持ちを思い出させたくないので、このことは光明だけに話したかった。
「その後、白い光が消えると、謎の人影もふぅちゃんもいなくなっていて、カゼとツキはお友達と一緒に日が暮れるまでビル内を探したけれど、見つからなかったみたい」
「次の日、私たちもお願いされて、そのビルや周囲を探しまわって、近所の人に聞き込みもしてみたわ、でも、ふぅちゃんは見つからなかったのよ」
「二人は、カゼとツキの話を信じたんだな」
少々意外そうに返した光明に、ハナとトリは「何言ってんだろう」と「その気持ちは分かる」の中間の表情で肩を竦めた。
「妹たちは、見たって言っているだもの、信じるわ」
「ただ、集団幻覚だとは思っているけれどね」
「二人だったらそう言うか」
苦笑を浮かべた光明だったが、すぐに、自分の後ろの襖を開ける。そっと顔を出すと、カーペットの上でテレビを見ているカゼとツキの横顔が伺えた。
テレビは、六歳にとってまだ早そうなサスペンスドラマの再放送をしていた。どんな場面になっても、カゼとツキからのリアクションは無く、ただ眺めているだけの様子だ。
「それから三日間、あんな調子か」
「二日間は泣いていたのよ、でも、今は虚脱感に包まれてみたいで」
「あの子たちが珍しく、学校以外には外にも出ようとしないくらい」
妹たちの心身を案じて、ハナとトリは溜息を吐く。彼女たちも、元気づけようと色々やってみたが、何も効果を得なかった。
それを訊いて、思案するように頷いていた光明は、本日持ってきて足元に置いていた紙袋を、改めて持ち上げた。
「じゃあ、俺、二人に土産、あげて来るわ」
「何を貰っても喜ばないわよ」
「むしろ玩具は逆効果かも」
心から心配するハナとトリに、大丈夫と手を振って、彼は部屋を出た。
「カゼ、ツキ」
「「……どしたの、パパ」」
二人は返事をしてくれたが、目線はテレビを見たままだった。それでも構わずに、背後に刺さるハナとトリの目線も気にせずに、しゃがんだ光明は紙袋の中に手を入れた。
「土産があるんだ」
「「何にもいらない。ふぅちゃんがいい」」
「じゃあ、見てくれよ」
つっけんどんなカゼとツキの言葉にも、にこやかに返しながら、光明は紙袋の中身を取り出す。見ようともしないカゼとツキだったが、それが視界に入った途端、ばっと振り返った。
「「ふぅちゃん!」」
それは、三日前に無くなったフランス人形だった。顔も洋服も、その重さも、ふぅちゃんそのものだということは、一緒に持ったカゼとツキだから分かる。
驚いていたのはハナとトリも同じで、部屋から出て、感動の再会をしている妹達をしげしげと眺めた。
「そっくりさんじゃなくて、本物のふぅちゃんよね?」
「あんなに探しても見つからなかったのに、どうして?」
「あの世に行っていたんだよ」
光明は、空の上を指差しながら、事も無げに言う。
「急に、これは娘さんたちの人形じゃないですかって、天使から手渡されたから、俺もよく分かっていなかったが、カゼとツキの話でピンときた。あの日、五人を襲おうとしてきた悪霊から守るために、ふぅちゃんは人形の体ごと、自分を成仏させたんだなって」
「じゃあ、貴方が言っていた、人形の中の悪霊って……」
「もういなくなっているって、事なのかしら?」
「そうだな。それでも、カゼとツキのことを心配していたから、人形だけでも帰らせたかったんだろ」
ハナとトリの言葉にそう返した光明だが、はっとして、二人の顔を見た。
「いつもなら、心霊現象なんて馬鹿にしているけれど、今日はやけに聞き分けがいいな」
「流石に、この感動の再会に水を差すほど、私たちも無粋じゃないのよ」
「それに、こんな奇跡くらい、起こってもいいんじゃないかって思えて」
「それもそうだな」
飽きることなくふぅちゃんを抱き締めているカゼとツキを、光明もハナとトリと共に穏やかに微笑みながら、いつまでも見守っていた。
花鳥風月と光 ~呪いのフランス人形~ 夢月七海 @yumetuki-773
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