僧伽藍摩の奥へ
その昔、特別な存在になりたかった。
それから、特別な存在になるのを諦めた。一歩引いて、身近な誰かにとっての特別な存在になれるよう努力した。
そして、その「身近な誰か」が自分にとっての特別な存在になったのに気づいた。
時間が経つと、自分は変わっていく。変わらず信じ続けた一つの真理と思えることがあった…自分にとっての特別な存在も、同じように自分のことを思っているはずだと。
しかし、証明のしようがなかった。
「僕たち、友だちだよね?」
あの一言は鋭い刃と化し、火花を散らした。
「違う。君のことは何とも思わない」
それ見たことか。身近な誰かを盲信し続け、妄信し続けたピエロの末路だ。
どす黒い憎悪の気持ちが芽生える前に摘みとれ。
ここはどこ?自分は誰?どこに向かう?
周りを確認しようと、手を伸ばしてみたら…手がないので触れられない。
あたりを見ようと、目を開けてみたら…目がないので見えない。
それでも前に進もうと、足を踏み出してみたら…足がないので歩けない。
いよいよ恐怖を感じた。助けを乞おうと、口を開いてみたら…口がないので鳴けない。
状況を整理しようと、頭を使って考えてみたら…脳がないので思考がまとまらない。
体がない。魂もない。心を知らない。何も知らない。何も感じない。ただ奈落の底へ落ちていく感覚だけが、魂に響き渡る…今もなお。
黎明と言う勿れ 菅原道磨 @sugaw
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