天球儀と彗星
パノラマのような日々の中
陽は沈んでまた昇る
周回軌道は変わらずに
私たちは運ばれる
望遠の遥か遠くで
恒星は燃えている
根無し草の彗星は
どこにも寄らず
どこにも行けず
ただ一身にパノラマの向こうへ
ただ一身に銀河の向こうへ
すれ違う星は数あれど
ぶつかる星はほとんどない
そういうものだと思っている
そういうものだと知っている
そうして過ぎ去る星の中
遥か遠くから見つけた光
彗星だけが知る光
それは数ある輝く星のひとつ
それは数ある美しい光のひとつ
そこにしかないもの
そこだけで移ろうもの
あなたは私を見つけただろうか
過ぎ去る私が残すものは
一筋だけの光の筋
私があなたを見つけられたのは
ほんの些細な偶然だった
誰かが言った それは幸運だと
天球のその上に
どうか見つけてほしいと思った
見つかりたくはないから
太陽の舞台の中で通り過ぎたかった
それは小さな銀河の中のこと
それは大きな宇宙の端のこと
周回軌道は変わらずに
私たちはまた進む
世界は何も変わらない
私はきっと少し変わった
さて それでは さようなら
幸運であれば またすれ違うかも
大きな宇宙の端のこと
小さな銀河の中のこと
私はあなたに恋をしていた
指先のため息 藤野 悠人 @sugar_san010
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