いま、ここにいる君へ。
ざわめきの中で、ふと息を吐いた。
無数の足音と、呼吸と、
飛び交う言葉の海の中で、
喘ぐように立っている。
どうしてここに居るのかと、
胸の奥へと投げかける。
見るも触れるも不確かな、
自分の命の形を探す。
おぼろげな最初の記憶から、
気付けばここまでやってきた。
精一杯に、自分の力で生きてきたと思う。
波任せに漂っているうちに、
流れ着いただけのようにも思う。
隠している自分のことを、
人に語ったこともある。
しばらく日々を生きるうちに、
全て嘘だったような気もする。
生きても良いと思いたかった。
相も変わらず鼓動を打ち、
光を恨んで目が覚める。
たとえそんな命でも、
今ここに居てもいい。
そう思える理由が欲しかった。
いま、息をしたこと。
いま、瞬きをしたこと。
ここに、居ること。
胸が、脈を打つこと。
今日、この目が映した空があったこと。
風が、この頬を撫でたこと。
匂いが、人の営みを教えたこと。
それを全て、愛したかった。
全部を受け入れて、生きていたかった。
全てと分かり合いたかった。
全部を受け入れられなくても、
たとえすべてを愛せなくても、
分かり合えなくたっていい。
いま、ここを繰り返す、
命を愛せなくてもいい。
ざわめく言葉の海の中、
それでも貴方は立つでしょう。
精一杯の力を込めて、
ボロボロになったその心で、
まだ続く鼓動のリズムに乗って、
踏ん張り続けて立つでしょう。
いま、ここを生きて。
もう少し先のどこかで、
昔話をして笑おう。
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