第6話 映愛ペンシルで告白したら



「出来た、望んだ絵を自動で描いてくれる魔法の「映愛ペンシル」です」


 これで、絵画の授業は、楽になります。


 私の名前は、オレンジーナ、中等部2年生です。

 金髪ですが、少し赤みが強いかも。


 私は、そのスジでは天才と言われる令嬢ですが、絵画はとても苦手です。

 でも、この魔法の映愛ペンシルさえあれば、楽勝になります。


    ◇


 今日の絵画は、教室を出て、風景画を描く授業です。


「オランジーナの近くですと、絵が下手になってしまいますわ」

 意地悪な令嬢たちが、笑って離れていきます。


「気にするなよ」

 同級生のカーボス君が慰めてくれます。

 少し顔が熱くなりました。


 金髪碧眼の、絵画のようなイケメンです。

 入学当初から、想いを寄せていますが、片思いかも。



 私は、学園の玄関前の芝生に座り、スケッチブックを広げました。


 玄関前は、通る馬車が邪魔になります。

 でも、頭に描くのは、馬車が通っていない風景なので、問題はありません。



 近くには、カーボス君と同級生たちもいて、並んで風景を描いています。


 ここで、魔法の映愛ペンシルの出番です。

 私は、目の前の風景を頭に描き、スケッチブックに向かって映愛ペンシルを振ります。


 すると、ペン先から出た光の粉が、スケッチブックに降りそそぎました。


「成功です」


 スケッチブックに素晴らしい風景画が浮かび上がりました。

 定着液を吹きかければ完成です。



「上手になったな、オレンジーナ」

 覗きに来た同級生のカーボス君が、褒めてくれました。


「これ、実はね・・・」

 魔法の映愛ペンシルを見せます。


「へぇー、すごい魔法だね」

 彼の碧眼が、キラキラしています。


「僕にも貸してくれる?」

「はい」


 私の作ったペンが彼の手に握られました。

 私は幸せを感じて、最高の笑顔になります。


「描きたい絵を思い浮かべ、魔法の映愛ペンシルを振るだけです」


 カーボス君は、言われたとおりに集中しています。



「あ、馬車が」

 学園長の大きな馬車が、玄関前を通ります。


 目を閉じて、集中しているカーボス君の、真ん前に馬車が来ました。


「えい!」

 カーボス君が、魔法の映愛ペンシルを振ります。


「あ、風景に振るのではなく、スケッチブックに向かって振るの!」


 彼が振った先には、学園長の馬車がいます。



「僕は、オレンジーナのことが、好きです」

「貴女のことを思って、絵にしました」


 ここで、告白?

 私も貴方を好きですけど、今は非常事態!


「あれ? スケッチブックが真っ白だ」

 カーボス君は、私が驚いている所と、まったく違う所で驚いています。



 近くで風景画を描いていた同級生たちが、騒いでいます。


「ねぇ、学園長の馬車、見て」

「すごい派手」


「オランジーナだよね、あの顔」

「痛い馬車」


 学園長の馬車いっぱいに、大きく、私の笑顔が描かれています。


 馬車は、そのまま、王宮に続く道に進んでいきました。




━━ fin ━━



あとがき

 最後まで読んでいただきありがとうございました。

 よろしければ、★★★などを頂けると嬉しいです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る