第3話 惚れ薬が効かない相手がいるとは



「この薬を飲めば、彼は私を溺愛するわ」

 出来たばかりの惚れ薬を手に、ニヤリとします。


 私の名前は、パイン、中等部の2年生です。

 でも、そのスジでは天才と言われている、美人令嬢です。



 金髪碧眼で、自分では美人のつもりなのですが、隣の席の彼は、私を見ても表情を変えず、それが悩ましいです。


 バレンタインが近いです。

 これをチョコに入れれば、気づかれずに、私に惚れること、間違いありません。


    ◇


 今日は、作戦を決行するバレンタインデーです。


「サイダー君、はい、チョコ」


 ドキドキしながら、隣の席の彼に渡します。

 このドキドキは、惚れ薬を試すドキドキではありません。


「ありがとう、義理でも、うれしい」

 彼は、相変わらず表情を変えません。


「すぐに食べてね」

 食べて、最初に見た人に、彼は惚れるはずです。


「美味しいチョコだね」

 あれ? 彼は、表情を変えません。



 あぁ~、サイダー君の態度が、まったく変わりません。



「これは、惚れ薬は、失敗ですか……」



「パイン、たくさんチョコを持ってるのね」

「ちょっと分けて頂戴よ」

 同級生の令嬢たちが寄って来ました。


「「私にも頂戴」」

 あっという間に、たくさんのチョコは持ってかれました。


 分量を間違えて、たくさん作ったのが、こんな所で役立って良かったです。



「「はい、義理チョコの大盤振る舞いよ」」

 同級生の令嬢たちが、たくさんのチョコを、手あたり次第、配ってます。


(数を撃てば、どこかに当たる……か)


 本命に当たらなきゃ、意味がないよ。



 なんだか、教室中が騒がしいです。



「俺、好きになってもらえるように頑張る」

「絶対幸せにするので、僕と付き合ってください」


「初めて会ったときから、貴女のことを忘れた日なんてない」


「君のことを、好きでしかたないんだ」

「誰かに取られる前に、僕の彼女になってください」


 教室中が、告白の嵐です。


 あー、あっちは女性同士で!


 これは、地獄、いや天国? 訳がわかりません。



「まさか、惚れ薬は、成功していたの?」



 でも、なぜ幼馴染は、変わらなかったの?



「パイン、少しいいかな」

 サイダー君が、カバンの中から、大事そうに何かを取り出します。


 一輪の赤いバラです。


「昨日、用意した。受け取ってほしい」

「教室では恥ずかしいので、今は一輪で勘弁してくれ」


 昨日? 惚れ薬を飲む前から、用意して……


「ありがとう、サイダー君」

「あの、さっきのは、本命チョコですから……」




━━ fin ━━



あとがき

 最後まで読んでいただきありがとうございました。

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