フカ子とサメ助の地味ぃ〜なイタズラ物語

Li'l Hatter

戦慄のヴァルキューレ

ここは、異世界『サメール』。

この世界の住人であるダークエルフの少女『フカ子』とペットの『サメ助』は、今日も元気に地味ぃ〜なイタズラをしようとしていた。


「フハハハ! 我が名は! 戦慄のヴァルキューレ!。この世界を混沌で満たす者なり!」

「……いや、それ魔王のセリフだろ」

「そう、我は翼の折れたダークエルフ……闇の眷属にして混沌の使者。そして、世界の敵よ」

「はいはい、厨ニ病乙……」


戦慄のヴァルキューレと名乗る少女が高笑いを上げる中、その横にいたペットのサメ助は呆れたようにつぶやく。


「で、今日はどんなイタズラをするんだ?

フカ子」

「ちょっ、本名で呼ぶなし!……そうね。まずは美術館の床にひのきの棒を置きましょう」

「はぁ? なんでそんなしょぼいもん置くんだ?」

「わかってないわね〜。どんなにしょぼい物でも美術館にポイポイするだけで、これは現代アートだ! と勘違いした人々が集まりだすはずよ」

「あぁ〜、なるほど。そういうことか」

「そして、人々がひのきの棒を見て騒いでいる横で私たちは嘲笑うというわけよ」

「ほ〜ん、さすがフカ子。バカな発想を考えるのは誰よりもピカイチだな!」

「フフッ、褒め言葉として受け取っておくわ。さぁ、悪は急げよ!すぐに実行するわよ!」

「うい〜」


こうしてフカ子とそのペットのサメ助による地味ぃ〜なイタズラ計画が始まった。


〜数時間後〜


「ねぇねぇ、見てこれ。なんかすごい芸術品らしいんだけど……」

「どれどれ?……うぉ!? なんだこりゃ? めっちゃクオリティたけぇ!」

「だよね〜! これを作った奴は天才だわ〜! 私ちょっと感動しちゃった」


美術館を訪れた2人のカップルは、床に落ちているひのきの棒の前で感嘆の声を上げていた。


(ククク……計画通り)


2人の様子を横で見ていたフカ子とサメ助は心の中でほくそ笑む。


(よしっ! 作戦成功ね! 後はこのまま放置しておけば勝手に勘違いした人たちが集まってくるはずよ)


そして、フカ子とサメ助はその場から立ち去ろうとした瞬間、


「なっ!?あの棒は伝説の……」


後ろの方から声が聞こえてきた。振り返るとそこには『異世界召喚』と書かれたTシャツを着た中年男性が立っている。彼は勇者だった。


「まさかこんなところで出会えるとは……

サメール神に感謝しなければならんようだ。サーメン」

「ゆ、勇者が何故ここに……」


突然の出来事に驚愕するフカ子たち。すると勇者はひのきの棒の前に集まるカップルたちを押しのけて、床に落ちているその棒をゆっくり拾った。


「うひょーっ! これが『サメリルの孫の手』か!。なかなか素晴らしい出来ではないか!」


※サメリルの孫の手とは?古代サメール神話に登場するサメールの最高神『サメリル』が持つとされる孫の手。背中が痒い時に使ってたらしい。


満足そうな表情を浮かべる勇者はなんと、ひのきの棒を持参したエコバッグの中に入れてしまった。


「「ど、泥棒だあーーーっっ!!」」


想定外の出来事に慌てて叫ぶフカ子とサメ助。


「ハッハハ! なんとでも言うが良い! さらばだ! サーメン! アーヒャッヒャッヒャーー!!」


高笑いしながら走り去ろうとする勇者。しかし、


「待てぃ! この盗人が!」


騒ぎを聞きつけたサメ警備兵たちが駆けつけてきた。


「チィ! 見つかったか! だが俺にはサ女神から授かった人知を越えたスキ──」

「はい確保〜」

「ぬおっ!……グボォ!?」


逃走しようとした勇者だったが、いつの間にか背後にいた美術館のオーナー(Lv∞)にあっさり捕まってしまい、そのまま警備室へと連行された。


「ふぅ……なんとかなったわね」

「おう! 想定外の事態になったけど、中々面白い展開だったな!」

「フフッ、そうね……さて、次はどんなイタズラをしようかしら」


こうしてフカ子たちは、その後も様々な地味ぃ〜なイタズラをして楽しんだのであった。


おしまい。


☆おまけ、キャラクタープロフィール


名前:不可フカ子(※本名)

年齢:514歳(外見は14歳)

種族:ダークエルフ(♀)

身長:160cm

髪型:ツインテール(銀色)

職業:学生(留年500回目)

趣味:イタズラ、小説、中二病ポエム

【概要】

三度の飯よりもイタズラが大好きなダークエルフの少女(自称:戦慄のヴァルキューレ)。服装は、サブカル系制服を着用している。

将来の夢は、世界征服。


名前:サメ助

年齢:3歳

種族:見ればわかんだろ(♂)

身長:158cm

職業:無職

趣味:イタズラ、ゲーム、釣り

【概要】

元々は鮮魚店で売られていたサメ(二足歩行)だったが、買い物に来たフカ子の母ちゃんに魅入られ、即購入される。以後不可家のペットとして育てられる。

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