あとがき

 今回はMasterpiece - Mass suicideをお読みくださり、ありがとうございました。昨今は過激な環境活動家が無関係のイベントや活動に飛び入り参加をして迷惑行為を働くなど、物議を醸したことでも話題となりましたが、そのことで環境保護勢力全体のイメージまで悪化してしまうのではないかと危機感を覚えたため、筆を執った次第です。


 読者の皆様は如何思われましたでしょうか。環境問題と一口に言っても、その意味する内容は複雑多岐にわたりますので、その深刻さをあまり良く理解していなかったという方もいらっしゃるかと思います。しかし間違いなく、現代の人間社会によって惹起され続けている環境問題は、地球を蝕む死病です。そのことに警鐘を鳴らすため、敢えて難解な言葉や過激な表現を多用して物騒な雰囲気を醸し出してみました。「そのせいで逆に良く分からなかったよ」という方には、申し訳ございません。


 ここで環境と人間の開発に係る1つの事例を紹介してみたいと思います。インドネシア・マレーシア・ブルネイの三国に属するボルネオという島には、世界有数の熱帯雨林が存在していて、絶滅危惧種であるオランウータン等の貴重な生物の数少ない生息地として知られています。ですが、一般にパーム油と呼ばれる、食料品、化粧品、洗剤、バイオ燃料、プラスチック加工品等の製品に幅広く使用されている植物油の原料であるアブラヤシの主要な栽培地としても知られていて、パーム油の豊富な使用用途によってアブラヤシの需要が年々高まっていることから、プランテーション農業を次々と拡大するためにボルネオ島の熱帯雨林は急速に消失しているんですね。


 熱帯雨林の消失は、炭素固定機能がある植物が失われることになるので、大気中への炭素放出によって地球温暖化が加速します。オランウータンをはじめとする絶滅危惧種の生息地減少とそれに伴う絶滅種の増加も無視できず、生計手段として熱帯雨林を利用していた現地住民の伝統・文化・習慣・生活の破壊を惹起します。また、インドネシアの泥炭地では乾季に発生する森林火災による越境被害が懸念されているのですが、パーム油の生産に伴う泥炭地での排水路掘削作業が原因で泥炭土壌が空気中に露出することで、火災の危険性が急上昇していて、これもまた地球温暖化を加速させる一因となっています。さらにさらに、環境問題のみならず、パーム油の大規模な生産活動に伴う開発は現地政府の管轄能力が及んでいない部分があって、汚職・収賄によって開発認可の不正や無許可開発に起因する違法操業やそれらによる強制労働、児童労働などの問題や農薬による健康被害等をも生じさせているんですね。


 「たかだか環境問題だ」と侮ってはいけません。私たち一般人が普段メディアの報道等で目にしているという文言は、いわばアリの巣の入り口に過ぎません。地面の下には信じられないほど根深い問題がこれでもかと広がっているのです。昨今世間を賑わせている某国家間の侵略戦争もその1つです。原子力発電所への発砲だなんて、仮に放射性物質の漏洩が現実のものとなれば、自然環境のみならず、人間の社会環境そのものも甚大な被害を受けます。ダムが砲撃されれば人命を奪いかねない水害が発生し、地雷等が設置されれば未来永劫拭い去ることのできない恐怖と自然環境破壊のおそれを後世に植え付けることになります。全ては繋がっているんですね。


 ──で、何が言いたいのと。僕のような拙い物書きが出来るのは啓蒙活動と銘打った情報発信を通じて、何処かの誰かに日常の気付きをお届けしたいというだけなので、僕の作品を通じて何か読者の皆様に好影響を与えられれば良いなという抽象的な願望があるのみです。ですが、そんなものです。神の創りし最高傑作である地球を破滅へと導き、集団自殺を試みようとする人類の愚行に歯止めを掛けんとするのは、僕1人の力では到底成し得ませんからね……。

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Masterpiece yokamite @Phantasmagoria01

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