連絡先を交換してくれない女

連絡先を交換してくれない女

　ある夜、街灯が点々と道を照らす道で、男が女に声をかけた。

　男は言った。「ねえ、連絡先交換しようよ」

　女が答えた。「すみません、スマホの充電切れてて……」

　「あ、じゃあこれ使って」男はカバンからモバイルバッテリーと充電コードを取り出した。

　女は言った。「あ、そういえばスマホ忘れてました……」

　男は答えた。「じゃあ家までついて行くよ」

　女は言った。「えーと、実は昨日家が無くなって……」

　男は答えた。「じゃあ僕の家に住みなよ。部屋空いてるからさ」

　女は叫んだ。「もう、いい加減にしてくださいよ！！！　連絡先交換したくないって言ってるんです！！！」

　男は答えた。「なぜ交換したくないの？」

　女は言った。「私、去年ここで死んでるので」

　女の姿は消滅し、そこには男だけが取り残された。

　男の正面には電信柱があり、根元には花が一輪供えられていた。

完