気ままな令嬢が、英国マンチェスターで巻き込まれる恋と殺人。その行方は?

 この物語は、ボーイフレンドのコンサートに出かけた美しい令嬢アデルが、滞在先のホテルで発生した殺人事件に巻き込まれることから始まります。彼女は、最初は乗り気ではなかったホテルのフットマン、ジーンと協力して、事件の謎を解明していきます。

 アデルの姉やその婚約者、ホテルのメイドたち。
 彼らの思惑が交錯する中、古き良きイギリスを舞台にした殺人推理が展開されます。殺人事件の真相は暗く、重苦しいものですが、紅茶やお菓子などの日常的なアイテムの描写が丁寧で、自由奔放なアデルが、あれやこれやと、クールなフットマンのジーンの注目を集めようと考えを巡らす姿は、ほほえましいです。

 特筆すべきは、アデルが恋するジーン・ロイドです。彼の冷ややかな性質を裏付ける背景には奥深いものがありました。
 この作品は、推理小説であると同時に、恋愛小説としても楽しめる良作だと思います。