灰色の世界でみつけたカラーの君
有栖川葉月
第1話
7年前のある日、女が一人、行方不明になった。
彼女は神経性色盲で世界が灰色に見える"ブロック"だった。
彼女には愛する男性がいた。
彼は"ブラック"の灰色の世界に色をもたらす"カラー"だった。
"ブラック"は何もない自分の世界に光を射してくれる"カラー"に執着する。
"ブラック"は"カラー"を独占するために越えてはいけない境界線を越えてしまう。
"ブラック"はー……独占するために"カラー"を誘拐して監禁したり、殺人を犯す。
これが"ブラック"と"カラー"の運命という素敵な響きの形をした、残酷な物語。
「…ーおかあさん、おかあさんがつけてるこのカチューシャはなにいろなの?」
「お母さんも一度しかちゃんとした色を見たことがないけど、これは"イエロー"よ」
「いえ…ろー…。ねえ、おかあさん…」
「あなたも色を見たいなら、カラーに出会いなさい」
「ねえ、おかあさん…」
「お母さんはね、この灰色の世界から出たいの。やっと出会えた彼なの。ごめんね、許してー…」
「お…お、おかあさん!… おかあさん!」
「元気でね、青空」
「おかあ…さんー…」
母は七年前のあの日から、どうしているのだろうか。
カラーである彼を殺した可能性もある。
色を見るために俺を置いて行ったなんて…
「"青空"っていう名前はね、いつか青空がきれ~いな"青空"を見れますように…っていう思いを込めて決めたのよ」
俺は人を傷つけたりなんかしない。
決して人を殺したりしない。
たかが色を見るためだけのために犠牲なんてつくりたくない。
俺はー…生涯、青空を見ることはないだろう。
灰色の世界でみつけたカラーの君 有栖川葉月 @sua_alice
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