その5 またメシの話してる。

「はぁ、おつかれさまー。今日も疲れた疲れた。」


 先に来ていたジュンさんと弥助に挨拶をして、空いている席に座る。


「お疲れ様でゴザル。なにか頼みむでゴザルか?」

「うーん、今日は明日早いからソフトドリンクでも頼もうかな。」

「それなら、このプレデタープランツのフルーツジュースがオススメですよ。」

「肉食じゃん・・・」


 相変わらずとんでもないもんが普通に食用として取り扱われている。と思ったけど、肉食の獣を食べるのは地球でも多少はあるか、ワニとかクマとか。でも肉食の果物って美味しいのか?そもそも肉食の植物に見えなくもないモンスターから生まれている果実のようななにかを、果物と分類して良いのか?


「ジュンさんは結構異世界の食べ物は平気そうだけど、抵抗はなかったの?」

「うーん、そうですね、肉類は豚肉とか鶏肉を食べていましたが、それ以外は穀類が多かったですからね。美味しさで言えばこちらの世界の方が美味しいので、むしろありがたいですね。」

「へえ、三国時代よりは美味しいものが結構あるのか・・・」

「あ、でも獣人系は流石に気が引けますね・・・」


 獣人系。亜人とは違い、獣人は魔物の一種で、いわゆるゴブリンみたいな人型のモンスターのことだ。こちらの世界にはこの獣人が結構いて、討伐したら普通に食べる。貴重な栄養源なのだから当たり前なのだが、ギルドにも調理用としての討伐依頼が日々掲示されている。


「最初は抵抗あったでゴザルけど、ほぼ熊肉に近い感じでゴザル。やはり、肉食の生物は独特の臭みがでるのでしょうな。」


 なんかすごいまともな食レポをしているが、その対象はゴブリンの肉だ。


「脚と二の腕は筋張ってて微妙でゴザルが、前腕はやわらかめで、内臓も酒のつまみにはおすすめでゴザルよ。」

「もうええわ。」力説されても食わん。


 ※


「お、今日も集まっていたか、失礼するよ。」


 ミトが仕事を終えて、席に参加する。


「今日も他国の調査か?」

「ああ、詳しい情報は得られなかったが、やはり地球から転移している者の噂をいくつか耳にした。数人は何かを企てているようだ。」


 どうも血の気の多いやつが転移してきているらしい。

 前にミトが言っていた、地球人を転移させている者が本当にいるとしたら・・・


「地球人を転移させている奴がいるとして、そんな血の気の多いやつを転移させているのに理由があるのか?」

「まず一つは前にも話した魔法と科学の融合だな。これは高度経済成長期以後の人材を転移させることで実現が可能だろう。」


 高名な科学者や技術者を転移させる・・・確かに知的好奇心旺盛な人材を呼べば、あっという間に技術革新が起きても不思議ではない。


「そして、有史以来の名だたる武将や知将の転移は、現在のグリゼリアの均衡を崩し、混乱を起こすためではないかと私は考えている。」

「混乱を起こす?」

「ああ、特に戦力の大きいジェノヴァとラムビアの睨み合いが、転移者による攻勢によって、大きな戦争に発展する可能性は大いにある。荀彧さんのように、ラームスの参謀として活躍してくれる分には良いが、全ての武将、知将が現在ある国家にくみするわけじゃない。実際に、レオニダスは一国を落として、占領した。」

「ふむ、確かに、戦争に身を置き、乱世を生き抜いた英傑がこちらの世界に来たとして、おとなしく既存の国家に従軍するだけとは限らないですからね。」


 ジュンさんの言う通りだ。特に国を納めていたようなカリスマが転移してきたとしたら、国を立ち上げようとするのは既定路線にも思える。


「なにより、地球での知識量や、格闘術などのセンスが、この世界での魔力の総量に影響されているようだ。」

「確かに、ジュンさんは普通に魔法を使いこなしているし、弥助も身体を強化する系統の魔法は得意だし、明らかにこの世界の一般的な兵士よりも高いな・・・」

「この世界の刀剣が、日本刀よりも切れなさすぎるから、質のいい武器を探すよりも、魔力をまとわせてブッタ切るのが手っ取り早いんでゴザルよね。」爽快爽快


 弥助もすっかり異世界に染まっちまった。


「私はとりあえず情報収集を続けるが、仮説としては、柳さんや私の知っている歴史的偉人たちが来ているのは間違いないだろう。」


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異世界でダベるだけ テレビ野_灯里 @tv_no_akari

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