第3話

「よーし、じゃあ出席とるぞぉ」

「いない奴いるかぁ?」

 

 ちょっと綺麗めのジャージの下に、ちょっとくたった感じのあるパーカーを羽織ったなんとも言えない適当な恰好。

 まぁ寝癖ついてるとかではないけど、すげぇ寝起き感。


「いたら返事できないっすよ」

「あぁ、あいついないっすよ」

「昨日サボるって言ってました」

 

 そんなやる気のない感じの先生だからか、みんな緩い感じで答えていく。

 つつがなく朝の恒例の学活が始まっていく中、思考はあの日に向かっていく。


―――――

――――

―――


「おい!! 大丈夫か!?」

「浩也!」

「瀬川先輩」


 ブザービートの喜びが止んだころだったと思う。


 血相を変えたように俺に声を掛けてきたのは、マッチアップした相手選手。

 大丈夫って感じのジェスチャーは出しても、声をうまく返せない。


 筋が伸びたような、足に走る鋭い痛み。

 体制を崩して、思いっきりゴール下の競り合いから落ちたせいで、背中というか肺というかには変な痛みが体を駆け巡っている。


 まぁなんとなくわかることは、

――ちょっとダメな感じっぽい。


視界の端に担架を持ったスタッフが見えてきた。


「ちょっとヒロ!?」

「大丈夫!?」


 担架の到着をじっと見ていると、頭上で泣きそうな、というか泣いている女性が一人。

 肩にかかるぐらいのミディアムヘアの金髪。

 でもって、本当にバスケの観戦に来たのかってぐらいのおしゃれ着。

 これは間違いないは、


「恋華さん、イケてるっすね」

「...なにいってんのよ、そんなんで」

「...勝ったっすよ」

 

 心配を掛けたくなくて全力で強がって見せる俺だが恋華さんの顔は曇っていく一方だ。


「大丈夫だから、恋華さん。浩也なら大丈夫。」

「そーそー、姉貴は心配しすぎだぜ」


 見かねたさやと大毅が恋華さんについて声を掛けたが、なんとなくだがこの二人は気づいてるんだと思う。


 まぁそんなことで、ひとまず落ち着いてもらい俺は一度別室へ行きそのまま病院へと直行となった。


 

 結果としては、後十字靱帯損傷。

 単純なとこ、靭帯断裂。


 二か月ほどおとなしく暮らせば、治る。

 そんな状態になってしまった。


 最初のうちはそりゃもうショックを受けて、それでも食事量を増やしたり上半身を鍛えたりと力を注いだ。

 俺が動きずらくなったということを聞いて、恋華さんとかもちょくちょくと世話を焼いてくれたり、姉の沙耶も自宅でのトレーニングなどには協力してくれた。


 だからモチベーションはあったのだと思う。


 ただ、いざ全国大会となった時だ。

 どうにか全国を突き進み後半になれば、俺も参加できるといった感じだった時。


――あれ、これ俺いなくても強くね?


 そう思ってしまったのだ。

 いや、俺も自分がチームを引っ張っているとか、エースは俺だなんて思っちゃいなかった。

 もちろんベンチの選手とかともよく交代をしたりしていたし、別に周りのみんな強いことは知っていた。

 ただ、戦っているチームメートを、チームとして動いている姿を見たときに俺はそう思ってしまった。



 一人そう察したときに俺は、腐った。



 

 

 

 

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