第2話
「おはよ」
ちょっとにぎわいだしているのをドア越しに感じながら、重めの引き戸を滑らして足を踏み入れる。
ついでに目についた数人かへの軽い挨拶を重ねつつ。
「お、浩也きたか」
「おお、来たよ」
声に気づいたのか、ドアの音で目に行ったのか、何で気づいたのかよくわからないがこっちに強めの反応を示したのが一匹。
てか毎度のことながら、俺の机に座って周りと話し込むのはなんでだよ。
ただこっちに気づいてすっと、降りるあたりあほではあるが馬鹿ではないのかもしれない。
「お前のせいで今日寝不足な日だわ」
「なんでだし」
ツイストパーマな君をいじりつつこっちへ愚痴をこぼしてくる馬鹿。
昔は、『星の王子』だなんだとあだ名をつけられていた男ではあるが、制服を着崩して、こっちを恨みがましい目で見てくる様は惑星の敵だ。
「姉貴が、うっせぇんだよ朝」
「姉貴って、恋華さんが?」
「そう」
何を隠そう、こいつこそが今朝一緒にバスケをした
あの落ち着いたような感じの人が、どうしてこんなファンキー馬鹿なんだか。
てか、元気なのは知ってるがうるさいのはいまいちピンとこない。
「うるさいってあれか? アップでも付き合わされてんのか?」
「ああ!? ちげぇよ。 前の日の夜からああでもないこうでもないに、朝からこうでもない、ああでもないって」
「なんだよそれ?」
――フォーム練習でもしてんか
随分とガチになっている彼女を想えば、そこまでガチになってもらっているなら俺ももっと本気にならないと失礼かもしれん。
「多分お前........まぁいいや。 姉貴機嫌はいいから」
「なんだそりゃ」
適度な運動が、心の健康とかなんだかんだなのかもな。
「で、どうだったん。 勝ったか?」
「もち」
「そ、姉貴悔しがってたろ?」
「ああ、まぁ。 でも楽しそうだったぞ」
「そりゃなぁ......ま、ざまぁって言っとくわ」
「.......しらねぇぞ」
多分、そんな姿は見たことはないがめちゃくちゃ怖そうな予感はする。
「で、復帰はしないのか?」
「.......」
ちょっとおどけた感じから、俺の脚に視線を移して大毅は真剣に告げる。
「壊れたわけでも、治ってないわけでもないんだろ?」
「.......まぁな」
言わんとしたいことも何もかもが伝わってくるが、なんというか。
でもこれをうまく伝えるのはなんとも、
「あ、そろそろ始まりそうだぞ」
「はいはい」
教室の喧騒が増してきたのを告げれば、納得はしてないようだがしぶしぶといった感じに大毅は机へと戻っていった。
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