第4話
「おい、浩也どうしたんだよ」
「あ、いや治ってねぇし。 間に合わねぇから」
「......嘘つくなよ」
睨むように俺の顔を大毅が見てきたのは確か、給食の後の昼休み。
全校へのアナウンスでバスケ部が呼び出されたとき俺は行かなかった。
別段、全体での叱られをバックレたとか俺のせいで全体が怒られたとかそんなんじゃない。
――バスケ部をやめたからだ。
やめた人間がミーティングに行くのはおかしいし、仮に続けていてもやる気の枯れ果てた人間は邪魔なだけだ。
「今日のミーティングで監督いってたぞ。 お前がやめたって。」
「ああ、そっか」
――今日伝えたのか
「もし治ってなくても、なんでやめんだよ」
「それに、治ってんだろ?」
「なぁ!」
すごい勢いで捲くし立てられたが俺の気持ちは落ち着いていた。
――俺のいない方がうまく回る。
その事実がしっかりと頭に刻まれていて、たとえ結果が出て大会に出ていなくても恩恵にあずかるみたいなのは嫌だった。
俺の最後のプライドがそれだけは止めたのだ。
ただ、それを大毅にいってもきっとわからないと思う。
それほどまでに、みんなが本当に良くしてくれていたのを俺は知っているし、実感があったから。
「なおってねぇって。 まあ一足先に引退して自由にやるわ」
「.......なんだよそれ」
「青春取り戻すんだよ」
ふざけて言って見せた。
ここで怒ったり笑ったりしてくれればどれだけ楽だったろうか。
大毅はただ寂しそうに俺をにらんでいた。
「あぁ~、今日医者の日だったわ。 帰るわ」
だから気まずくなった俺は、カバンをもって教室を出た。
監督の方には、きっと親がうまくいってくれていて、監督が担任にはこれまたうまく伝えてくれていたんだと思う。
一応、職員室へ行って帰る旨を伝えたときに担任は少し困った顔をしながらも、
『がんばれ』
そういって送りだしてくれたから。
ただ、そうやって逃げ道がやさしさで整っていたから俺は、それはもう逃げまくった。
まぁ、両親はよくても沙耶はめちゃくちゃ絡んできたけど。
逃げていたとき、早く帰っても部屋で腐っていてやることがなくて結局外に出ていた。
それこそ医者に関しては結構前に本当にハードな動きをしなければいいといわれていたから、通うこともなかった。
だからかもしれない。
ちょっと遠出をして、だれも知り合いのいないような街でトレーニングをした。
これまでの努力を無駄にしたくないとかそんな殊勝なことではないけど、なぜかそれだけはしないといけない気がしたから。
辞めたくせに女々しいと、今なら思うが、バックにボールと簡単な支度だけして隣町のバスケコートに行ってみたり、ちょっと朝早くにストリートのコートに出かけてみたり、そんなことは繰り返した。
今思えば、洗濯とかで絶対ばれてたんだとは思う。
確かそんな時だった。
「お、ヒロ! 奇遇じゃん!!」
朝6時ぐらいのコートに、絶対奇遇じゃないような格好の恋華さんが現れたのは。
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