第6話
街灯が爛々と光る駅前の長い居酒屋やカラオケがひしめき合うある方面でのメインストリート。
そんな、ちょっと治安的にどうなんかわからないところを進む、学生とトレンドをちゃんと抑えた年上ギャルが一組。
真昼間なら、視線を集めて離さないような組み合わせではあるが、もう居酒屋が本気を出し始めている時間だからだろうか、そこまで視線を集めている感じはしない。
「ねぇ、学校どう?」
「え?」
楽しそうにこっちを覗き込むんでくるその顔は、優しさも多大に含んでいるのがわかる。
ただ、そんなことを聞かれるとは露とも思っていなかった身からすれば、何か即答できる内容はない。
「え、じゃなくて学校生活ってやつ」
「うーん.....あ、カバン持ちます」
「ありがと」
なんというか、なんとか会話を紡ごうと、ひねり出そうとしたときに視線にはいった、両の手で持たれた重そうなそれを搔っ攫うことにとりあえずは決める。
特に抵抗もなく嬉しそうに渡してくれたそれを受け取って方にかけて考える。
「
「あいつ馬鹿だから」
「ひでぇ」
つい、彼女の弟のことを例に出してみれば、寸分たがわぬ精度での罵倒が来る。
まあ、なんだかんだこの二人が仲いいのもよく知ってるんだけどな。
「じゃ・な・く・て!」
「ヒロはどうなのってこと!」
「うーん」
まぁ、そうなんだろうけどいまいち思い出すほどのエピソードがない気もするのだが、
「あ、でも恋華さんとバスケしてから学校行くのはいい感じっすよ」
「何それ」
「何すかね」
いまいち印象がないのが、学校生活なのだそれでも恋華さんと一緒にバスケをして、そのあとに行く学校はなんというか充実してる気はする。
といっても、授業中は睡眠時間と化してる節があるのだが。
「でもそっか」
ちょっと跳ねたような声を出す恋華さん。
「おし! ごはんおごっちゃる!」
「え? いいっすよ。そんな」
「いいのいいの! ほらご飯行くよ!」
なにがそんなに機嫌がいいのか。
仕事でいいことでもあったのか、はたまた腹がめちゃくちゃ減ってるとか。
「てか、たまには俺が奢りますよ。 ほんとマジで」
「いや、いいっていいって。 おねぇさんにおごられとけって」
「でも、いつもおごってもらってばっかなんで」
「じゃあ、今度のデートおごってよ」
「え? ああ、映画でいいっすか」
「おっけ」
デートっていって外に連れ出される。
それがここ最近の流れだった。
といっても腐って、クソダサニートムーブをかましてた時に恋華さんがそういって俺を連れ出してくれてたんだけど。
マジのデートなんて思うほど、俺もうぬぼれていないし。
「よーし! 焼肉いくよ!焼肉!」
「いや、豪華が過ぎる!」
「いーのいーの!!」
何がそんな気に入ったのか、
よっぽど気になる映画でもあったんかな?
ぶっちゃけバイトもやっているし、どっか出かけたいって言われれば日帰りでならそこまで豪華なところじゃなけゃいける....と思うんだが、そうやってちょっと無理したことをしようとすると、決まって恋華さんに逆に出させてしまう感じがあるんので、ほどほどのラインを突くことにしてるんだが、
「いっぱい食べて、明日も勝負だからね!」
「うす!」
とりあえず家族,,,,といっても姉経由で行けるだろうから、
『恋華さんと飯いく』
そう送ればまるで連絡を待っていたかのような速さで、
『ちゃんと送れよ。了解』
なんとも男らしい返信が帰ってきた。
いろいろと言いたいことはあるが、
「おーい! こっちとこっち。 どっちがいい?」
食べ放題のチェーン店と、明らかに2ランクぐらい上のお店を交互に指さす彼女のもとに急いだ。
「ちょっと俺にあっちは早いっす」
周りが全力で外堀を掘っているんだが 紫煙 @sienn
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