第4話

 気づいた頃にはその場所は警察によって入れない場所になり


僕達は凶器の発見者として警察署に連れていかれることになった。


警察署に着くやいなやまたも質問攻めだ。




警察署というところは初めて来たが


テレビドラマなどで見ている想像通りの場所だった。


健太郎のお兄さんは僕達にストレスがかからないように


すごく優しく聞いてくれて、パソコンに何かをずっと打ち込んでいる。


ある程度の質問が終わったところで


健太郎のお兄さんは


「それじゃ、大体はわかったから世間話でもしようか。」


突然そんなことを言い出した。




学校での話や健太郎と仲良くしてくれてありがとう。と


言われ、なんだかくすぐったくなった。


僕はトイレに行きたくなり。トイレの場所を聞くと


健太郎のお兄さんがついてきた。


トイレで聞いた。


「僕はやっぱり疑われているんですか?」


健太郎のお兄さんは


「私たちは疑うのが仕事でもあるからさ、


 でも一連の通り魔事件は全て犯人が一緒か、


 一つのグループが犯人だと思っている。


 これだけ何人も被害者が出ているのに


 全く尻尾をつかめなくて私たちも迷っているところに


 君の件が出てきたからね。


 疑っているというよりは、何か見てたり知っていることないかな。


 そう思って学校にも行ったんだけどね。


 でも、健太郎と君が凶器を見つけてくれたのはすごくありがたいよ。


 これで少しでも犯人に近づけられればいいんだけどね。」


健太郎のお兄さんはすごく優しい。


「僕達はいつ帰れますか?」


そう聞く。


「そうだね、大体の調書はできたしあと少しかな。」


少し安心する。


刑事さんたちに怒られてからというものの


なんだか警察署は居心地は良くない。




部屋に戻ると刑事さんが増えていた。


一人の刑事さんが書類を持って駆け寄ってくる。


「島津さん。結果出ました。」


健太郎のお兄さんは書類に目を通すとため息をついた。


そしてゆっくり息を吸うと


僕の方を見た。


「孝明くんそこに座ってくれるかい?」


僕は言われるがまま椅子に座る。


「さっき言ったことは無しだ。


 孝明くんはまだ帰ることができなくなった。」


健太郎も口を開く


「兄貴。なんで?」


健太郎のお兄さんは続ける。


「健太郎は帰っていい。帰ってはいけないのは孝明くんだ。」


健太郎は引き下がらない。


「孝明がいるなら俺もいるよ!いいでしょ?」


健太郎のお兄さんは周りの刑事さんに目で合図をした。


健太郎は刑事さんたちに連れていかれた。


部屋には僕と健太郎のお兄さん、そしてもう一人刑事さんが残る。


「何かあったんですか?」


僕は聞く。




肘を机に置きうな垂れるような格好をし


ゆっくりと深いため息をついたあと健太郎のお兄さんが口を開く。


「僕も信じたくないんだけどね、


 今日見つけた金属バットは健太郎が見つけて


 君はその後に木に引っかかっているのを見ただけと言ったね?」


「はいそうです。」


健太郎のお兄さんの目つきが鋭くなった。


「その金属バットから孝明くん君の指紋が出てきた。




 君はこれで重要参考人ではなくなった、


 通り魔暴行事件の容疑者になる。」




僕は何も考えれないほど驚き、何も口から出なかった。




「では、これより山崎孝明容疑者の取り調べを始める。」


目の前で言っている言葉が遥か遠くで言っているような感覚になり


頭がズキズキと痛くなる。


誰が何を言っていて、自分がどの立場で、今ここがどこで、


昨日は誰に怒られて、自分が自分で、自分は自分で?


知らない自分がいて・・・




気が付いた時には病院にいた。


白いカーテン、白地にひじきみたいな模様の天井。


横には腕を抱えたまま椅子で寝ている健太郎のお兄さん。




「あの、すいません。」


僕は健太郎のお兄さんを起こす。


「ああ。気が付いたか。」




どうやら僕は取り調べが始まった途端


気を失ってしまいそのまま椅子から転げ落ち頭を打ったように見えたらしい。


確かに頭がいたい。


今日はそんな状態であることと、未成年の学生であることから


取り調べや事情聴取は明日になることだけ伝えられ


健太郎のお兄さんは病室から出て行った。


少し経ったくらいに母が病室に入ってきた。




「孝明遅くなってごめんね!大丈夫?」


やっぱり家族の顔と声は安心する。


安心した途端目頭が熱くなった。


「おガァ。。。s」


僕はしっかり喋ることができなかった。


涙が続々と出てくるし、


口からは子供みたいな鳴き声しか出てこない。


「孝明ごめんね、大丈夫だからね。」


そう言いながら母に抱きしめられた。


僕は小一時間子供みたいに泣いた。泣いて泣いて、


自分がなんで泣いているのかもわからないくらい泣いた。


母はずっと僕を抱きしめていてくれた。


泣き止んだ時。


母の後ろに人が立っていることに気づいた。


父だった。




「おう。久しぶりだな。


 孝明お前の鳴き声廊下まで響いてたぞ。ハハハ」


父の声を聞いた時僕は安心感でまた泣きそうになった。


父は白衣を着ている、そうか、ここは父が働いている病院だ。


僕は父と母にここまでの状況を説明した。




親は偉大だ。


父と母が普段いない家で生活することに何も嫌だとか


不安とか思ったことはなかったが、


こういう時に二人の顔を見るとすごく安心する。


しばらく会っていなくても僕のことを一番に思ってくれている。


そう自信を持てる。




明日からは取り調べが始まる。


今日はゆっくりと寝よう。




おやすみ


お父さん、お母さん。

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深夜の迷走者 Midnight Wanderer ひとかいふく @hitokaifuku

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