第3話
健太郎とせっかく金曜日で明日は学校が休みだから
遊びに行くことにした。
健太郎と呼ぶことに抵抗はどんどんなくなっているが
健太郎と呼ぶたびに健太郎がニヤッとするのが少しイライラしてきた。
向かったのは近くのデパート。そうあのコンビニの近くだ。
デパートで男二人。別に何をしたいわけでもないがゲーセンに入った。
どこにでもある音ゲーをして、メダルゲームをやり、
メダルが二人とも底をついた。
健太郎が突然もじもじし始めた。
コイツとの付き合いは一年ほどだが学校の外で遊んだことは数えるくらいだ。
それに二人だけで遊ぶのなんて初めてなのではないか。
意外とお互いにプライベートには踏み込まない感じではあった。
「あのさ、嫌だったら嫌でいいんだけど、」
健太郎が言った。
この文から始まる言葉で良い提案にあった事がない。
僕は眉を顰めながら聞く。「なに?」
「プリクラ撮らない?」
ぷりくら。。。ぷりくら。。。?ぷりくら?
プリクラ!!!
僕、山崎孝明は彼女がいたことはあったが小学生の時くらいで
中学では特に彼女もできず、デートもした事がない。
プリクラというものを撮ったことはあっただろうか、
すごく小さい頃に家族で撮った気がするくらいだ。
いいのか?男二人で撮ることは普通なのか?
男子高校生が二人でプリクラコーナーというピンクとか黄色とか
カラフルな色のきっと女の子とカップルくらいしかいない場所に足を踏み入れて何も思われないのだろうか?
確かに今日で健太郎とはすごく仲良くなって
健太郎と遊びに来たのも初めてだしなんかその記念写真みたいな感覚で撮ってみたい気持ちはある!
だけど、いいのか?変ではないのか?
そんな葛藤をしていると健太郎が「変かなぁ?あはは」
と笑い混じりで言ってきた。
僕はこの健太郎の顔を知っている。
去年文化祭で演劇をやった時主役を誰がやるか話になった時、
健太郎は一番先に手をあげて「やりたい!」と言ったが
その後多数の女子たちが「えー裕介くんやらないのー」
といいクラス1イケメンの裕介が「やろうかな」と言った時の顔だ。
あの時も健太郎は「そうだね、僕が主役は変だもんね。裕介くんにしよう。」そんなことを言っていた。
僕もだいぶ健太郎のことがわかってきたようだ。
「いいよ。プリクラ撮ろう。」
僕はプリクラコーナーへ健太郎を引っ張っていった。
周りは予想通り女の子ばっかりで、カップルが数組。
僕達は一番近いプリクラ機にお金を入れ
可愛い声に案内されるがままに撮影ゾーンへ行く。
サクッと写真を撮り、らくがきゾーンに行く時左側の荷物置き場に健太郎が財布を置き忘れていた。
「健太郎。財布忘れてるよ。」
「え?ああ、本当だ。ありがとう。」
らくがきと突然言われても何を書けばいいのかわからなかった僕達は
日付と何の略語なのかわからないスタンプを押して制限時間が終わった。
初めてのプリクラが終わった。
親友記念だ。
その後、健太郎は通り魔事件の現場を見に行きたいと言い出した。
僕も興味があったので一緒に行くことにした。
バスで3駅。歩くのも疲れたのでバスに乗った。
降りるとき不思議なことがあった。
僕達はバスの後ろから二列目の右側に乗った。
三列前におばあちゃんが座っていた。
降りる駅は同じで健太郎が僕の前を歩いていった時、
ちょうどおじいちゃんが立ち上がった。
健太郎は歩くスピードを緩めることなくおじいちゃんとぶつかった。
「あ、ごめんなさい。見えなくて。」
「大丈夫ですよ。こちらこそごめんねぇ」
学校でのサッカーボール、財布の忘れ物、おばあちゃんが見えない。
思い返せば普段僕の左側にしか健太郎はいない。
右側にいるときは健太郎の正面の顔が見えていることが多い。
パズルのピースは揃ってしまった。
「健太郎!」
「なーに?」
「健太郎って左目何かおかしい?」
「ん?何が?別におかしくないけど」
僕の思い過ごしだったのだろうか。
「あ。でも右目よりは視力悪いかな。
さっきおじいちゃんとぶつかっちゃったのは料金表しか見てなかったんだ。」
僕の思い過ごしか。
そうだよな、こんなに一緒にいて知らないはずはない。
歩いているうちに事件現場につく。
道路は一車線でただの住宅地という感じだ
街灯は確かに少なく、両脇には一軒家が建っている。
確かにここを一人で歩いていたら襲われても誰も見てはいないだろう。
健太郎は自分の推理を発表し始める。
「これは、ここの近所の人の犯行ではないですねぇ。
深夜ということもあるしその足で公共交通機関では帰れないだろうからただ人を襲いたいというよりは、
その個人を襲うという目的で実行しているに違いない。」
健太郎が上を見て足を止めた。
その目線を追うと僕も足が止まった。
「あれ。。って」
そこから二人でどうする?何をすればいい?
二人して慌てふためいた。
健太郎がお兄さんに電話をかけた。
5分後には健太郎のお兄さんとあの時の刑事さんが僕らの元に来た。
「山崎くん。昨日は怖がらせて悪かったね。
僕が健太郎の兄の島津優作です。それで何を見つけたって?」
「兄貴!あれ!」
健太郎が指をさしたその先。
一軒家に生えている木の枝に引っかかっている。
僕らが見たものはーーーー
血がついた金属バットだった。
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