エピローグ

 ダンジョンから戻ってきて数日、やっと落ち着いて配信をする余裕ができた。


―― 配信を開始します……


「こんばんわ~ん、ぬいぐるみ系VTuber、猫乃わん太わん」


❤〚わんわ~ん〛

◯[やっと配信かー、待ってた]

∀[お疲れ様ー、こっちも大分片付いたけどまだまだ混乱してるよ]


 新ダンジョンの発見に、そもそもフィールド型ダンジョン内に遺跡型ダンジョンという新事実。それに加え、その存在が示唆されてはいたが真偽不明だったダンジョンコアの存在の確認。目白押しの新情報にその影響は探索者支援協会だけにとどまらなかった。


探索者シーカーギルドからの事情徴収も大変だったけど、他との交渉はギルドが全部請け負ってくれたので助かったわん」


◆[世間的にも新発見だらけだったね]

◯[今日はあの後の話や色々説明してくれるってことでいいのかな?]

∀[守秘義務に引っかからない程度に話してくれよ]


「そうだねー、今日は質問に答える雑談配信でいいと思うわん」

 のんびり配信は本当に久しぶりだ。


◯[まず、結局あの遺跡ダンジョンはなんだったの?]


 ボクが落ちて探索した遺跡型ダンジョン、これが最大の謎とも言える。

「あの遺跡型ダンジョン自体は入場になんらかの制限があるタイプの特殊なダンジョンと考えられてるわん」

 その後の調査でもダンジョンへの入り口は発見されなかった。ただし、ボクが出てきたのもダンジョンに落っこちたところと一緒だったため入り口、というか、入り方は地面が崩れて落ちるあれで正解と考えられている。

「最初、あのダンジョンの実在自体疑われたんだけど、ばっちり配信に残ってたから夢や幻覚のたぐいではないってことになったわん」


▽[ということは、フィールド型のダンジョンの中には更にダンジョンがある場合があるってことか? 定説が変わるな]


 これまで、フィールド型ダンジョンの中には2層目や別のダンジョンへの入り口はないと言われていた。

「それなんだけど、そもそもあのフィールド型の初級ダンジョンをダンジョンとみなして良いかの議論が始まってるみたい」


∀[あの初級ダンジョンはダンジョンの端が見つかっていないし、奥は魔物が強すぎて探索もできていない。便宜上ダンジョンと呼んでいるが、それこそ本当の異世界扱いでも良いんじゃないかという議論だな]

◆[なるほど、ダンジョンじゃなければダンジョンがあってもおかしくないと]

◎[そういえば通常のフィールド型ダンジョンは端があったり、ループしてたりするな]


 ちなみに、他のフィールド型ダンジョンは広くても10キロメートル四方ぐらいらしい。


◯[あのダンジョンといえば、最後の光の玉って結局何?]


「ボクが触ったら外に出たやつだね。おそらく、ダンジョンコアだろうって話だわん」


◯[やっぱり、あると言われてたダンジョンコアなんだ]

◆[ダンジョンの最奥にあって、触るとダンジョン踏破になると言われてたやつだね]

∀[ギルドとしては暫定的ではあるが、あれをダンジョンコアと認定している。後、探索者シーカーには通知がいくと思うが、ダンジョンコアを故意に破壊するときつい罰則が課せられるようになるから注意な]


「非公式だけど、ダンジョンコアを壊すとダンジョンが崩壊すると考えられてるっぽくてギルドとしても困るらしい。ほんと試しに攻撃しなくて良かったわん」


◎[草w、ということはわん太は正式な初のダンジョン踏破者?]


「ダンジョンコアに触るのが条件ならそうかもしれないけど、ギルドはダンジョンコアを探すのも非推奨にするらしいよ」


▽[うっかり壊したらダンジョンからの資源とれなくなるし、損害賠償考えると見つけたくないな]

◯[そういえば、拾ったアイテムとかは高く売れた? ほら、『ノンデ』なポーションとかあったよね]


 けっきょく、ビスケットと交換でうさぎさんたちにもいっぱい色々もらってた。複数あるものや効果がわかってギルドで欲しがったものはギルドで買い取ってもらったり、オークションに出品してもらうことになっている。

「うさぎさんたちにもらった野菜とかはあの後ギルドの食堂で料理してもらって食べたよ。『ノンデ』なポーションは……言っていいのかな」


∀[後日、ギルドからオークションに出すことになってるが高額で落札されるのは間違いないな。まあ、すぐ分かるから言っても問題あるまい]

◯[お、結構よいポーションなの?]


「よいポーションというか、特殊なポーションだねぇ。ボクにも有効だったら飲んでたかもしれないけど……身長が伸びるポーションだったわん」


◯[それは……欲しい人は幾ら出しても欲しいやつだ]

◇〚首だけ伸びたりはしないよね?〛

∀[多分大丈夫だ。鑑定スキルと一応軽く実験もした]


「これで大体質問も終わりかな?」


◎[あ、次の配信はいつ頃?]


「あー、今回のダンジョンが色々ありすぎたし、現実リアルのダンジョン配信は当分休もうかと思ってるわん。その代わりといってはなんだけど、ゲームバーチャル内でのダンジョン配信はしていくつもりわん」


▽[今回の探索の内容濃過ぎだったしな]

∀[当分はわん太がギルドにくるだけでも色々騒ぎになりそうだから、少し大人しくしてくれてたらギルドもありがたいな]

◎[そういえばギルド周りにはまだまだマスコミがいっぱいいたw]


「そんなわけで、当分現実リアルのダンジョン配信はおやすみするけど、別な配信はしていくからよろしくね。それではバイバイわ~ん」


❤〚ばいばいわーん〛

◯[おやすみー]

▽[またなー]


―― 本日の配信は終了しました……


「ダンジョン配信自体は面白いんだけど次にダンジョンに入った時にどうなるか怖いんだよなぁ……」

 視界の片隅に表示されるようになったステータス情報を眺めてため息をついた。


―― 称号

   * ダンジョン踏破者

   * パウリ遺跡ダンジョンマスター





―― あとがき ――

 これにて、「猫乃わん太 in Dungeon」は一旦完結済みとさせていただきます。

 この物語はKAC2023のネタとして777文字で書いたダンジョン配信物( https://kakuyomu.jp/works/16817330654522953700 )の続きの話でした。

 同様に猫乃わん太としての小ネタや連載化したものを、猫乃わん太コレクション( https://kakuyomu.jp/users/mituha/collections/16817330654179865121 )としてまとめて有りますので、そちらもご覧頂けると幸いです。




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【VTuber】猫乃わん太 in Dungeon【ぬいぐるみ系】 水城みつは @mituha

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