第11話

--翌日--



令菜は教室の入り口で唯を見つけ、彼女が机の引き出しから何かを探しているのを目撃した。



唯は中腰で引き出しを開け、手探りで何かを探しているようだった。



その瞬間、昨日の唯の無防備の姿、そしてその後、自分が一人きりで自分自身を慰めるしかなかったことを思い出した。



思い出したことを振り払うように頭を左右に振る。



探し物をしている唯の後ろから令菜は



「唯、おはよう」



唯は振り向き、明るく笑って応えた。



「おはよう、令菜。今日もいい天気だね。」



「そうだね、今日も気持ちのいい朝だね。」



「何か探してるの?」と唯に聞くと



「ううん、もう大丈夫、たぶん寮の部屋に忘れてただけみたい。」



そうして唯は思い出したように令菜に向かって



「あ、そういえばさっき花村部長が来てたんだ。今日、授業の終わりに美術部の説明をするから部室に来てほしいって」



「わかった!一緒に行こうね!」



「もちろん!なんだか定員がいっぱいになったみたいだよ。私たちラッキーだったね!」



二人が話をしていると、教室のチャイムが鳴った。先生が入ってきて、授業が始まる。唯は集中して授業に参加し、令菜も真剣な表情で先生の話を聞いていた。美術部の説明があると思うと、二人ともワクワクしていた。








授業が終わり、二人は教室を出て美術部の部室へ着く。



ギギギッと音を響かせて扉を開けると、美術室特有の香りが鼻をくすぐった。色とりどりの絵具や筆、キャンバスなどがきちんと整理された棚に並べられている。空間には芸術的な雰囲気が漂っていて、心地よい緊張感が生まれた。



「二人とも待ってたわ。」



花村部長は二人に微笑みかけながら、机の方を指差して「そこに座ってもらえる?」と誘導する。



すでに他の生徒は行儀よく座っている。



二人は申し訳なさそうにイスに座る。



部長は「皆さん集まったようなので以前説明したかもしれませんが、あらためて美術部の説明をしたいと思います。まずは入学おめでとうございます。そして、美術部に入部してくださり、ありがとうございます。美術部では、芸術の力を通して自己表現を目指しています。制作活動は、単に技術を磨くためだけではなく、自分自身の内面にある感情や思考を表現するための手段でもあります。様々な素材や技法を使いながら、自分自身の表現していきます。例えば、抽象画を描いたり、彫刻を制作したりすることで、内面にある複雑な感情を表現することができます。自分自身の生きる環境や社会に対する思いを描いたり、作品を通してメッセージを伝えたりすることもあります。また、作品を制作したり展示会の準備を行うことで、自分自身や他者をより深く理解することも目指しています。部員たちは、お互いに作品やアイデアについて話し合い、新しいアイデアを出し合って理解を深めましょう。このような協力と助け合いの精神は、美術部員たちの間で非常に大切にされています。」



そう説明すると部員たちは拍手した。



「こんな風に説明すると不安になってしまうかもしれませんね。」と笑いながらいった。



「私が言いたいことは、自分の感情に素直になってほしい。ただそれだけ。」



その言葉を聞いた令菜は胸が締め付けられるような感情を抱いた。



「今日の美術部の活動はこれで以上です。次に皆さんが来てもらうのは来週の月曜日です。月曜日に何をするかというとデッサンを描きます。画材はこちらで準備するので皆さんが何か持ってくる必要はありません。これは課題ではありませんが、休みの日に翠峰市にある画材店に行くことをお勧めします。翠峰市にある画材店は、豊富な種類の画材を扱っており、絵を描くために必要なあらゆるものが揃っています。また、スタッフの方々は絵を描く人たちのことをよく理解しているので、何かお悩みや疑問があれば親切にアドバイスしてくれます。画材を見るだけでも刺激を受け、アイデアが湧いてくるかもしれません。ぜひ足を運んで、創作意欲を高めてみてはいかがでしょうか。」



そう言って「私たちはまだ美術室にいますので、何か気になることがあれば、ぜひ聞きに来てください。また、皆さんの先輩が制作した作品も展示していますので、ぜひ見学してください。それでは、今日はお疲れ様でした。」



新入生たちは、それぞれ目標を持ちながら、美術室を後にした。



令菜と唯も先輩の作品を鑑賞し、部室を出る。






寮に戻る途中、令菜は唯に「部長が画材店に行くことをお勧めしてたけど、私今度の土曜日に行ってみようと思うの。でもひとりじゃ不安だし、唯もよかったらついてきてくれる?」



そう言うと、唯は「もちろんだよ、実は私も気になってて令菜を誘おうと思ってたの!なんか気が合うね♪」と言って笑う。



「よかった!一緒に行けるって思うと、不安も減るし、楽しみになって来ちゃった。」



「きっと楽しいと思うよ。私も初めて行くし、どんな画材があるのか、ワクワクする!」



令菜と唯は土曜日の画材店の話題で盛り上がりながら、それぞれの部屋に向かって歩き出した。

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秘密と恋人 ハカム @Hakamu856

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