ニュースの切れ端から組みあがった地獄は、ついに狂気の舞台を花開かせる

「断片的な記事やネット情報の形を取った短文を集めて恐怖物語を編み上げてゆく」という手法は、困難でありますが、前例がないわけではありません。

しかし、その中に登場する人物がかくも存在感をもって浮かび上がり、ついにはその対面と衝突が一大ドラマとして描き出される。
これは本作の特徴にして主眼です。

陰惨ではあれ、日々の中へ過ぎ去ってゆくニュースに取り上げられる名前が、だんだんとその背景とともに形を成し、ひとりひとりの人間として浮かび上がってゆく。

このプロセスを、もう一度、自分の目の前に繰り返してみようか。
その誘惑を前に、迷ってしまいます……。

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