シャンパンコール入れればどんなホラーも怖くない説

ちびまるフォイ

読者1名いらっしゃいましたぁーー!!!

それは、雨音がやまない暗い夜のこと……。


夜の静寂を切り裂いて、一本の電話がかかってくる……。



「わたしメリーさん……」




「いま あなたの うしろに にいるの」




その瞬間、ミラーボールが輝きシャンパンの蓋が開く!


歌武器町の夜はここからが本番だ!!!



「メリーさんご来店いただきましたぁーー!!!」


「「 いらっしゃいませぇ~~い!! 」」


「今夜は最高の夜を楽しんでいってくださーーい!」


メリーさんはあっという間に席に座らされる。

イケメンが周囲を囲む逆ハーレム状態。


「え、え、ええ!?」


おもわぬ好待遇にメリーさんは目を白黒させている。

しかし、そんな初回客にこそ親切に接するのがホスト!


「それでわぁ! メリーさんの初ご来店を祝して!

 コールを捧げさせていただきまーーす!!」


\ よいしょーー! /



「今日はご来店いただきありがとうございまぁす(あーりやすっ)!」


「ふたりの!(ふたりの!)」


「すてきな!(すてきな!)」


「夜に!(よるに!)」



「か・ん・ぱ・いを!(よいしょー!)」



「それでは従業員もりあがっていくぜーー!!」


「そして!(そして!)」


「そしてそして!(そしてそして!)」


「姫から!(姫から!)」


「なにか!(なにか!)」


「ステキな!(ステキな!)」


「プ・レ・ゼ・ン・ト!(プレゼント!)」



「「「 3、2、1、どうぞ!! 」」」



急にマイクを向けられたメリーさん。


「ふ、ふえええ!?」



「シャンパンいただきましたぁーーー!!」


\ あーりやっす!! /


周りの勢いと雰囲気にメリーさんは流されるばかり。

昔のホラーシンボルであるメリーさんであってもホストの前では無力!!


さらに悪いことに怖がられることに慣れていても、

女の子として扱われることには慣れていない!


あっという間にきらびやかなお酒が運ばれてくる!


この手際のよさもホストの腕前のひとつなのだ!



「M卓メリーさんからシャンパンいただきましたぁーー!!!」


「わ、わたしメリーさん、あのちょっと……!」


あわあわするメリーさん。

そんなメリーさんのアゴをホストがくいと持ち上げる。



「今夜は"さん"づけなんてよそよそしいことはやめようぜ。

 オレの前じゃ、君は愛しのメリーちゃんだ(エコー)」



きゅんっ……!


メリーさんはそのとき、初めて恋の始まりを知った!!



「従業員エビバディあつまれーー!!」


\ いーーよいしょーーっ /


メリーさんのソファを囲んでホストが並んでゆく!

すでにメリーさんの顔は恋する乙女のソレだった!


「本日はこちらのメリー姫より、シャンパンぶちこんでいただきましたーー!!」


\ あーーりやす!! /



「それでは!(それでは!)」



「店を!(店を!)」



「揺らした!(揺らした!)」



「メリーに!(メリーに!)」


「乾杯コール!(ハイ!ハイ!ハハハイ!)」


「い っ て み よーーー!!(よいしょーーー!)」



「朝まで!(朝まで!)」


「ぶちあげ!(ぶちあげ!)」


「やってくぜーー!(よいしょーー!)」



「シャンパンじゃーーい!(シャンパンじゃーい)」


「シャンパンじゃーーい!(シャンパンじゃーい)」



「すてきな!(すてきな!)」


「気持ちが!(気持ちが!)」


「「「 つ・た・わ・る・よ! 」」」


\ よいしょーー! /



「シャンパンじゃーーい!(シャンパンじゃーい)」


「シャンパンじゃーーい!(シャンパンじゃーい)」



「姫の!(姫の!)」


「愛を!(愛を!)」


「い・た・だ・き・ま・す(よいしょーー!)」



マイクがシャンパンのコルクに向けられる。

ぽん、と小気味よい音がさわがしい店にも響いていく。


この非日常感にメリーさんはうっとり……。


「今夜の!(今夜の!)」


「主役は!(主役は!)」


「メリーさん!(よいしょー!)」



「そして!(そして!)」


「そしてそして!(そしてそしてーー!)」


「今日の主役!(ハイ!)」


「メリーさん!(ハイ!)」


「最後に!!(最後に!)」


「ひとこと!(ハイハイ!)」


「3(ハイ!)」


「2(ハイ!)」


「1(ハイ!)」



骨抜きふにゃふにゃにされたメリーさんへ再びマイクが向けられる!


「しゅき……///」


かろうじて言葉にできた人語はそれくらいだった。



「「「 ありがとうございまーーーーす !!」」」




翌日、メリーさんはどう帰ったか覚えていないが自宅で目を覚ました。


自分が怖がらせるはずの存在であることを思い出し、

昨日のできごとを深く深く反省した。


と、同時に自分がはじめて女の子としてはやしたてられた快感の余韻にも浸った。



そして今日もメリーさんは電話をかける。




「もしもし……私メリーさん……」





「今日はお店にしょうくんは来てますか……?」

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