自由の森に隠したもの
大隅 スミヲ
自由の森に隠したもの
彼らは盗みのプロだった。
音もなく颯爽と現れては、素早くモノを盗み去っていく。
「やられた……」
気づいたときには彼らの姿はなく、倉庫の中が空っぽになっていた。
こんなことができるのはヤツらしかいなかった。
※ ※ ※ ※
夏の終わり。
彼らは収穫に励んでいた。
収穫が終われば、秋がやってくる。
秋は食べ物が豊富であるため、夏の終わりに収穫したものは、倉庫の中へと保管しておき、食べ物の少ない時期への貯蓄へと回すのだ。
その日の朝、在庫確認にやってきた
昨晩までは、倉庫内を見渡す限り詰め込まれていた品物がひとつもないのだ。
「やられた……」
太郎は大慌てで倉庫を飛び出した。
※ ※ ※ ※
「大量、大量」
「さすがはアニキですね。まさか、こんなところ隠しているとは知りませんでしたよ」
二人の小悪党が笑っている。
彼らの運転するトラックの荷台には、倉庫から盗み出した袋が大量に積まれていた。
「これで俺たちは来年の夏まで働かなくて済むぞ」
「いやー、嬉しいな。遊んで暮らせるってわけですね」
「おうよ」
※ ※ ※ ※
その年の夏、自由の森にはヒマワリ畑が広がっていた。
「おい、あんなところにヒマワリ畑なんてあったっけ?」
「去年は無かったと思うんですけれど」
「これじゃあ、例のモノを隠した位置がわからなくなっちまうじゃねえか」
「そうっすね。ヤバいですね。掘り起こして移動させますか」
「そうだな。目印はどこだ?」
「え……目印はあの大きな木のはずなんですけれど」
その木のまわりには、大量のヒマワリが咲いていた。
「おい、シマリス。やっとみつけたぞ!」
背後から大声で叫ばれた。
振り返ると、そこにはハムスターが5匹いた。
「な、なんだよ」
「去年の秋、俺たちから盗んだものを返せ!」
相手は5匹。こちらは2匹。シマリスたちは観念した。
「わかったよ、返すよ。返すから、ちょっと手伝ってくれないか」
「どういうことだ」
「お前らから盗んだヒマワリの種は全部このあたりに埋めて隠したんだ。それを掘り起こすのを手伝ってほしい」
シマリスはそういって、ヒマワリ畑となっている辺りを指した。
「しょうがねえな。手伝ってやるよ」
ハムスターたちはそう言ってシマリスたちと一緒にヒマワリが咲いている辺りの地面を一生懸命掘り起こした。
もちろん、シマリスたちが隠したというヒマワリの種は見つかるはずがなかった。
自由の森に隠したもの 大隅 スミヲ @smee
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