第43話 誰?

「も、もういやぁぁぁぁ!! いっそのこと殺してくれぇぇぇぇぇ」


私の腕の中で悲鳴を上げているレイカさんと、


「レ、レイカさん!! ちょっと黙ってください!!」


「ふごっ」


必死にレイカさんの口を抑える私。

そして、


「この誘拐犯がぁぁぁぁぁぁぁぁ、まてゴラぁぁぁぁぁぁぁぁ」


そんな私達を追いかけてくるガラの悪い自警団の方々。


「ち、違うんです!! 誤解なんですぅぅ」


「それなら、止まって話を聞かせんかぁぁぁぁぁぁぁぁ」


「い、嫌ですよぉぉぉぉ、逮捕する気持マンマンじゃないですかぁぁぁぁぁぁぁぁ」


「当たり前だ! 未成年誘拐なんてふざけた真似をする輩は即刻豚箱いきじゃぁぁぁぁぁぁぁぁ」


「ひぇ、そ、そんなの嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁ」


「ちっ、止まる気なしか……。 仕方ない。 野郎共、やっちまえ!!」


「はい!!」


後ろで、そんなやり取りが交わされると同時に、


シュッ


と私の足下を何かがかすった。

そして、数秒後、地面に着地したソレは、


ボンッ


と小さな爆発音を上げ、レンガで舗装された道の一部をえぐった。


「キャッ、これって、魔法攻撃!?」


「ははは、その通り!! 小規模な攻撃だが、当たれば足に穴を空けるくらいの威力はあるからな。 覚悟しろよ??」


「ちょ、じょ、冗談じゃ……、キャァァァァ」


「ハハハ、死ね! 死ね!!」


ボンッ ボンッ ボンッ


勢いで飛んでもないことを口走っている自警団の人達から放たれる魔法攻撃が、私の体をかすめ、小さな爆発音を響かせている。

やばい、このままじゃ、本当に死ぬ……。

本気でそう考えた私は、


「こ、これでもくらぇぇぇぇ」


そう言って、鞄の中から厳重に蓋が閉められている瓶を取り出し地面に叩き付けた。


「う、なんだこの臭いは……」


違和感に気づき、鼻を抑える自警団の人達。

すると次の瞬間、


「ふご、うがぁぁぁぁぁぁぁぁ、目が、目がぁぁぁぁぁぁぁぁ、おろろろろろろろろっろろ」


全員がその場で倒れ込み、もがき始めた。


「……マツザカさんの近況を調査して際に、偶然発見してしまった、生乾きのふんどしです。 普通の人間なら近寄っただけでも気絶してしまう凶悪な兵器。 これをくらえば、いくら屈強な自警団の人達といえど……、ってくっさぁぁぁぁぁぁぁぁ、おえぇぇぇぇ」


全力で走っていたため、マツザカのふんどしからある程度距離は離れていたが、それでも、腐った卵のような臭いが鼻の奥をツンっと刺激した。

そして、その臭いに耐えられなかったのか、


「く、くちゃい……、おろろろろろろろろっろろ」


レイカさんは、私の腕の中で限界を迎えていた。


「れ、レイカさんんんん! 服! 服に掛かってるから!! おぇぇぇぇええええ」


ふんどしから放たれる悪臭とレイカさんの口から出ちゃったものの臭いが混ざり、辺り一面にこの世のモノとは思えない悪臭が漂っており、空の上を飛んでいた鳥たちが、バタバタと地面に倒れ始めている。


「や、やばい……、このままじゃ……、ホントにヤバい……」


朦朧とする意識の中、レイカさんを抱えて、必死に走る私。

そして、30分後、


「お、おぇぇ、な、何とか生きて……おろろろろろろろろ」


若干、限界を迎えながらも、MMTと書かれた標識が掲げられている建物の前に到着した。


「こ、ここでレイカさんを引き取ってもらおう……。 それで私は着替えを取りに家まで……」


「いい加減真面目に話を聞けぇぇぇぇえええええええ」


「あびゃんっ」


「キャッ! い、いきなり何!?」


ドアの前でボーっとしていると、凄まじい怒号と共に、マツザカが壁を突き破りながら登場した。


「やぁ! ヒカリさんじゃないか!! 元気かぁぁぁぁぁぁぁぁ」


私に笑顔で挨拶しながら、ヒューと何処かに飛ばされていくマツザカ。


「ほ、ホントにどうゆうことなの……」


あまりにも支離滅裂な状況に困惑していると、


「そこまで強く殴ってないだろ……。 なんでそんなに飛んでいくんだ……?」


崩れた壁の中から、見知らぬ金髪の男性が顔を出した。


「……ん? 君は……。 レイカちゃん……!? それと……」


私とレイカさんの存在に気づき、視線をこちらに向ける男性。


「あ、ども……」


そんな男性に軽く会釈する私。


「……」


私達の間に沈黙が流れる。

そして数秒が経った頃、


『『誰?』』


私達は揃って同じ言葉を口にした。

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冒険者パーティーを追放された私は、ドMの変態男と一流冒険者を目指すことになりました 柊 蕾 @fuyunisakuhana

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