異世界転生である。魔法も出て来る。
男女逆転である。時代はほぼ中世。
こう来れば、ラノベとラベル付けるのは間違いない。ないのだが、これは文学なのだ。
ギャグもあれば、苛烈な戦闘シーンもある。
だが、文学なのだ。
本格的というのでは無いが、心理描写や古典や近世の文学からの多様な引用も含めて読み応えがある。
ラノベを軽んじるつもりは無い。私も大好物だ。だが、こうした文学書を時折読みたくなる。そんな時これと出会った。出会ってしまった。出会えたのは幸運だった。
軽く読み流すも良し。熟読精読するも良し。
私のような変態的活字中毒者から異世界ダイスキヒャッハー!な読み手まで幅広く対応可能だろう。
楽しむが良い!
それぞれの性癖に応じて!(笑)
貞操逆転、男女比率を設定に入れる話は勿論他にも多数作品が見つかると思います。
ただ実際、登場人物達が存在する世界として読者が納得あるいは理解できるバランスを表現出来ているかと言うと。この作品を見てから思い直すことになりました。
性的に、あるいは子を産む種の本能的に愚かだったり賢かったりと人間くさいバランス感が作中の人物に生きている感を見せてくれるのが、とても読み手の心を掴んできました。
涙とか勢い、という当事者達の動きと彼らがその時の行動を否定や肯定反省を繰り返し思い返す描写も読んでいて感じ入れました。思い返す描写は作品展開が進まないとかその思考は理解し難いとかで他の作品では苦手な流れでしたがそれを感じさせない程に引き込まれています。
今現在120話越えたあたりですが続きがまだある事に喜びつつも、連休が潰れる様な脅威を感じられる作品です。
この物語の根本は、歴史・政治・経済をがっしり組み込んだハードボイルドな物だと個人的に読解しました。
それを、貞操逆転の世界観と一握りのファンタジー要素でマイルドにし、ともすれば雑多な歴史小説の焼き回しになりそうなところに個性を加え、独自の深みととっつき易さが出ています。
また、下ネタ的要素が主題にあることにより、どこまで深い話になっても最終的には「そこ」に戻ってくる安心感と軸のブレなさが担保されていてテンポよく読みやすい物語になっていると感じました。
よくある貞操逆転世界におけるハーレムの形成や主人公の鈍感さ、ヒロイン達がヒロインになる等の理由にも丁寧な背景があり、インスタントではない筆者独自の世界観の構築が楽しめました。
露骨な下ネタ表現に払い落とされず、とりあえず、まずは一章読んでいただきたい小説です。