四、永遠に廻る季節の中で
あれからどれくらいの時を共に過ごしただろう。
山に時折生まれる"穢れ"は、
そうやってふたり、永遠に終わることのない時を優しく育んでいく。
季節は廻り、春夏秋冬。廻る季節を繰り返す。
「
「ただいま。今日は何をして遊んでいたんだい?」
自分の姿を見るなり駆け寄って来た愛しい者たちを、
「おかえりなさい、
「ふふ。私は、すぐに見つかっちゃいました」
足にしがみ付いて見上げてくる幼子に微笑み、
赤い瞳、白い髪の毛。自分の分身である幼子は、
ひとの子とはまた違い、あくまでも神である
だが、それは自分を神として崇拝する者が望まない限り、生まれない。
神狐の分身として生まれた幼子は、ひとの子よりも成長が遅く、十年以上経っているのにまだ五歳くらいにしか見えない。
❅❆❅❆❅❆❅
幾度となく身体を重ねているのに、いつも初めてのような恥じらいを見せてくれるので、
「もう少し先の事になるが、
ぼんやりとした瞳に
山神の代替わりは、次の山神を指名することで完了する。それはつまり、
情事の終わった
その姿は淫らなのにどこか美しい。肩から半分ずれ落ちている単衣。赤く腫れた唇。潤んだ瞳に残る涙の痕。
全部、
「私、は······
「ああ、そうだな。俺の可愛い花嫁だ」
「
(その言い方だと、俺が可愛いということになるが····まあ、いいか)
細かいことは気にしない
「······
愛して欲しい。そう、ずっと昔に願った。今は、こうやって毎日のようにお互いに伝え合う。その感情を
「ずっと、一緒、······です」
「ああ、そうだな。ずっと一緒だ」
愛しい花嫁の唇にそっと口付けをし、何度も誓い合った永遠を約束する。
「愛している、
何度も何度も。何度でも。繰り返す、言葉。
唯一無二の
どうか、ずっと傍にして欲しい。
いつか朽ちてしまう、その瞬間まで。
❅❆❅❆❅❆❅
それから数十年後、立派な青年の姿に成長した
「俺たちはここを離れ、別の場所で静かに暮らす。この役目は、"穢れ"が無くならない限り続くだろう。間違っても荒神になどなるなよ、」
「肝に銘じます。でも俺にも
「その時はお前が愛してもらえばいい。そう思うだろう、
秀麗な顔がふたつ並んで、
「はい、どんな方がお嫁さんでも、愛してあげてください!」
急に訊ねられ、
「
にっと満足そうに満面の笑みを見せて、
「どうか、無事に、おつとめが果たせますように。そして、たくさん愛してもらえますように、」
そんな大切な子に、幸せになって欲しいと願うのは、当たり前だろう。
「ふたりは一生、離れずにいてね。次に逢いに行く時にその方が楽だから!」
「はい、一生離れません!」
ぎゅっと
「では、しばしの別れだ」
知らなかった外のセカイは、今でも興味が尽きることはなく、いつだってはじめてを
「泣いてもいい。故郷を離れるようなものだ。ひとは、こういう時に感慨深くなるものだと聞く。だが、そう嘆くこともない。
慰めてくれているのだろう。
生きるのも、一緒。
死ぬ時も、一緒。
それが、神の
永遠に廻る季節を、ふたり。
終わらない物語を、紡ぐ。
それは、四季折々に揺蕩う、"あなた"に恋焦がれる物語。
春夏秋冬、"あなた"を想う。
これは孤独な神と、それに触れた者たちの、終わることのない永遠の物語である————。
~ 冬の章 了 ~
【あとがき】
これにて、冬の章完結。そして、ついに季節の物語が完成しました。
始めた時はかなり見切り発車でしたが、なんとか無事に書ききることができました!
冬の章は今までの章と違い、ずっといちゃこらしてましたが、どうだったでしょう?いつもの悲劇を求めていた方、胸糞な鬱展開を期待していた方、本当にすみません。
たまにはこんな可愛い?お話も書いてみたかったのです。
最後の締めに色々と詰め込みましたが、お気付きでしょうか?
タイトルとあらすじの一部分を引用しているのですが、『君→あなた』に変えているのです。"○○"って強調しているので、バレバレですが。
『君』は神様、『あなた』はひとの視点から。
すべての話が"君"と"あなた"ではないのですが、最後の冬の章は
そして、季節は廻って春が来るのです。
ここまで楽しんでいただけたでしょうか。
この章をもって、季節の物語は完結となります。
一年間、ご愛読くださった皆さま、本当にありがとうございました!
また、違う作品でお逢いしましょう。
柚月 なぎ
四季折々に揺蕩う、君に恋焦がれる物語。 柚月なぎ @yuzuki02
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