夏休みの小学生をバリエーション豊かな怪奇現象が襲う!
- ★★★ Excellent!!!
小学生のタケルは夏休みの自由研究で町の地図を作ることに。ただの地図ではない、町の中で不思議な場所を見つけたら『怪』の文字を書き入れる特別な地図だ。しかし、最初は軽い気持ちで始めたのに異常なことが出て来るわ出て来るわ……。
ホラーと子供の相性はすこぶる良い。子供というのは物理的にも社会的にも弱いものだ。だからこそ脅威に出会ったダメージは大人以上に強烈だし、見た物をそのまま語る子供視点のホラーには何とも言えない淡々とした怖さがある。
そんな小学生が主人公の本作では、タケルが出会う怪奇現象のバリエーションがとにかく豊富!地面を金づちで叩き続ける不気味な老人の話から、友人が見た奇妙な夢の話に、危ない大人に襲われそうになる話など、毎回タイプの違う恐怖でこっちを追いこんでくる。読み終わってもやもやする話から、オチに捻りが効いている話、ちょっとほっこりする話など、読後感も多彩なのが素晴らしい。
タケルの地図はまだ完成されておらず、次の話で完結とのことだが、この物語はどのような結末を迎えるのか……器用な作者だけになかなかオチの予想がつかず、是非最後まで見守っていきたい。
(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=柿崎 憲)