†ツーク・ツワンク・ブランダー†

†Ⅵ†

　アバターの声に騒いでいた声が止まる。五人は互いに顔を合わせ、死にたくないとは言葉にはせず「お、穏便に行きません?」とクズ記者の言葉に無言で頷く。

「つか、アンタらどんな経緯で捕まったんだ？」

　Rを追い掛けていた一人が話を切り出すと警戒しているのか口を開く者は居なかった。捕まった経緯ではなく、先程“〇〇なクズ”という晒を受けたからか【隠された罪】を暴露された面を気にしているのだろう。気まずさに五人は苦笑。

　静けさにゲームの発展はなく『楽しくない』と感じたのか、アバターよりも先に裏方で動いていた和也が五人の元へ黒いカバンを滑らせる。

「ん?」

　クズ警察がそれに気付き、周囲を警戒しては鞄の中を開けると言葉を失いつつ袖に何かをそっとしまう。

「どうやら、あまりにも動かないからさっさと殺れと催促かけてるみたいだ」

　その言葉に四人は鞄を覗き、「先に隠れる。銃取ったヤツ、最後に隠れて銃声で合図してくれ」と何かを隠すようにクズ警察が足早にその場から離れると四人は各自使えそうなモノを手に取る。

　中に入っているのは武器になりそうなものからそうじゃないモノまで。職業柄を示すものを無意識に取る彼らに和也は静かに笑った。

「おい、アバターの権限を俺に返せ。流石にお前じゃ無理だろ」

『えぇー未成年は無関係って言ったの誰さ』

　インカム越し、和也はアバターの権限を今回握っている“誰か”と口喧嘩。

「お前な……未成年だからって調子乗るなよ」

『そっちだってクズのくせにぃー正義ズラするなぁ!!』

「ハァ!?　このクズ自警団!!　おい、高校生。無理やりでも奪ってお前が仕切れ」

　ブチギレ間際の和也。しかし、『え、あの……すみません。Rさんに頼まれてハッキングとか邪魔されないように見張ってて』の純夜の言葉に和也は「あぁ……そういうことか」と冷静さを取り戻す。

『ねぇ、中々殺し合わないから“圧”かけていい?』と自警団（R）の声に和也は「イヤ、しなくていい」と否定。

『なんで?』

「クズが一人動く」

『はい?』

「観てれば分かる。ガキは黙ってろ」

　R達の無線を切り「F、二階の鑑賞できる部分から観てた方がいい。いくつか隠しカメラあるんだろ?　なら、上手く切り替えれば見映えいいモノが撮れるかもしれない」と和也は暗闇にいる誰かの背中を叩く。

『アイツらに何渡したんだ?』

「あ?　動かないから餌投げたんだよ。ついでにアイツらの隠れて起こした罪をぎっしり詰め込んだ書類付きでな。今頃、配信の方でも明るみになる。助かったとしても行き先は地獄。可哀想な奴らだ」

　和也の推測通り、スマホでアバター配信を覗くと細かく五人のクズさを語っていた。

『この中でクズなのは記者と警察ですかねぇー。記者はかなり悪質な方で殺人を犯した家族を脅すように取材しては“悪を成敗”って正義気取りでしたから。皆さん、誰が一番のクズだと思います?　まぁ、個人の意見ですからね。コメントにてバンバンお書き下さい。え、生き残った人を当てたら何かして欲しい?　いやー生き残るかは分かりませんよぉ。此方もタダ働きするわけには行きませんからね』

　と、楽しく話していると配信では見れない【非公開チャット】にクズ呼ばわりされた大人が愚痴のように呟く。

　NOname-死垢K

『クズ晒してもリスナーが晒して公になると予想するなら助かった奴も後日死ぬに賭ける』

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　裏カジノ経営中＠屑

『マジそれな（二人分）』

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　ストーカーしてほしい方募集

『それしかないですね』

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　殺し屋喫茶店＠案件募集中

『これ勝ったら未成年組奢って♡』

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　元傭兵＠じじぃ

『で、Kは誰が勝つと思うんだ?』

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　NOname-死垢K

『クズ警察と言いたいが記者だな。クズ警察は小賢しいだけで雑魚と予想する』

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　元傭兵＠じじぃ

『なるほど。カメラ持ったか』

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NOname-死垢K　

『カメラともう一つ武器があったら勝てるだろ。多分、先に殺し合うのは――だろうな』

　クズな大人組の予想にさり気なく配信で『あーワタクシの駒が今日一段と煩いですね』と吐く姿に和也は嗤うも『参加者には言ってませんが一人駒が紛れてるので、そこは上手く避けてほしいですよね』とアバターを操ってるRは面倒くさそうに参加者に聞こえるよう“そこの部分”だけ漏らした。