†Ⅴ†

「はーい、ピースのみなさ~ん。

 なんか変な時間に配信してしまいましたが……すみませんねぇ。色々と問題が起きまして緊急配信です。ヤレヤレ、部下が上手く動いてくれればイイモノを……何故やらんのか。あ、スミマセン。愚痴漏れてしまいましたー」


 本来ならFのフィールドを借りるつもりが『行きつけ客が居たら困る』と配信する直前に言われ、「ハァ!?」と和也はブチ切れながら仕方なく男らを運んではFが恭一や殺し屋関係に提供する場をサバゲーのフィールドとして貸してもらうことに。

 前回、廃墟でコンクリートだけの場所だったため被らないように夜の市街地をイメージした薄暗い空間に男らを打ち込む。


「今要求するな。このバカ」


「ヤケにカリカリしてんな。どうした」


 黒い手袋をした和也とFは市街地フィールドの物影に隠れながら別々の場所でビデオカメラ片手にインカムで話す。


「お前らのせいだからな。よりに寄って裏方に回されるとは“立場”考えろ」


「仕方ないだろ。くじで決まったんだ。坊主、少しは年上を敬え。他の奴らも珍しく参加するんだ。少しは此方のみになれ。よりに寄って配信者が小僧共になるとは思ってなかったが“お前の代わりが二人いる”という点はお望み通りなんじゃないのか」


 冷静なFの言葉に和也は押し黙ると男達が目を覚ましたのか。「此処、何処だ!!」「お前ら誰だよ!!」と参加者同士の言い合う声が聞こえ、二人は別方向から無言で歩き出す。


『ハロハロークズな皆さん。今日は下らないゲームのためにご参加ありがとうございます。いやーこのゲーム、最後の最後に取っておきたかったのですが、のせいで早まってしまいまして……もう計画がゴチャゴチャなのでやるしかないという決断に至ったものでして……。

 あ、申し遅れました。晒し系で裏のSNSで活動している“K”と申します。諸事情がありまして声のみ室内には響いておりますが、此方では配信してますので悪しからず』


 陽気で馬鹿にしている声に「はぁ?」と半ギレな声。


『あ、ご理解できません? 仕方ないですねぇ。連絡手段は全て閉ざしてありますので此方で使ってるアプリインストールさせていただいてます。観覧してはいかがでしょう?』


 と、男達のスマホに和也達が使っているアプリが不自然にインストールされ、スマホを片手に開く五人は「なんだよ、これ……」と言葉を失った。

 彼らのスマホにはチェスを思わせるアバターがニンマリ笑いながら手を振り『やぁやぁ、クズの皆さん。あ、クズって言ってもどんなクズがわかりませんよね? ご丁寧に紹介してあげますよ』とキヒヒッとアバターは笑う。



・SNSで気に入らぬ人を傷つける、出会系クズ三人。

・警察なのに昇格のため情報漏えい。

 他人に押し付け、嫌がらせをするクズ。

・嘘のネタ、取材にしては度を超えた行動に自殺にまで追い込んだクズ。



『名前と住所だけ晒さないだけでも優しいと思いなさいな。本当は晒してやりたいですが、ワタクシは“ヤサシイ”ので』


 クスクス笑うアバターに「お前、クソな自警団だろ!!」とRを追い掛けてきた男三人は察したのか声を上げると『おやおや、誰のことですかねぇ。ワカリマセン』と否定。

 いつもならコメントをオンにしていたが珍しくこの時はオフ。確かに見慣れた人には少し違和感があるかもしれない。だが『映像優先のためコメント表示してないだけで別で見てますからー』の声に違和感が消える人もいるのだろう。


『あ、投げ銭アリガトウデズ。なんかすみません。下らない前ぶりが長くて……。もう待ち遠しいと思いますので簡単に説明します。

 此処から出たかったら❲している人達を皆殺し❳にして一人だけ生き残って下さい。一応、スタッフいるので間違えないでくださいね。もし、彼らに手を下したら……ワタクシが許しませんので。では、ゲーム開始!!』

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