卒業する学生諸君。教科書は捨てずに取っておけ。

小稲荷一照

学校でどれだけ苦労したとして、教科書は敵ではない。

教科書の内容は机に向かって自習したとして、抽象化一般化が進みすぎていて、具体的な連結に乏しいから、経験と想像力が十分に整理されていない未成熟な精神には耐え難い悪魔のように感じるかもしれないが、それでも教科書は敵ではない。


突然退屈しのぎに数学の教科書を読めという話でもない。

そういう風に読んでいたとしても、大学進学が楽になるという種類のものでもないしね。

例えば、大学の授業あるいは進学した高校の授業で挫折したときや、レポートのネタに詰まったときにネタ探しあるいは参考書代わりに読んでも良いし、小説のネタにもなる。

理科年表とか天文年鑑とか地図帳とかああいうものももちろん良いのだけど、読み物としての完成度の高さという意味では検定教科書。ことに中学高校の教科書は後々になって読み返してもかなり順序立てて説明されているので、捨てないで人生に行き詰まる直前に読むことをおすすめする。

特に職場での昇進試験などがあるたびに読み返すと色々小ネタを挟める。

検定教科書は極めて密度の高い読み物である。

教科書は、るるぶや東京ウォーカーのような雑誌にも通じる、目的意識があって初めて意味がある読み物で、価値がわかるようになったらオトナの証拠といえる実績メダルなんだが、オトナになって手にする機会の少ないアイテムなのだよな。


とりあえず、就職して部下を持つまで教科書は捨てるな。

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