かわいいおひなさま
花田トギ
かわいいおひなさま
「このお雛様に触っちゃいけないよ。大事なお雛様だからね」
おばあちゃんにそう言われた陽菜ちゃんと大くんはこくりと頷きました。
「いい子だね、じゃあお布団用意するね」
これにもこくりと頷くと、大きな和室の中に陽菜ちゃんと大くん2人きりになります。
「陽菜ちゃん、ぎゅうして」
「いいよ」
大くんはお姉ちゃんの陽菜ちゃんが大好き。陽菜ちゃんも大くんが大好きな仲良しきょうだいです。
「ママいつ迎えに来るのかなぁ」
「春休みが終わる頃には来るって。それまでおばあちゃんちで頑張ろうね」
「陽菜ちゃんはずっと僕と一緒にいてね」
「もちろん!お姉ちゃんだもん」
陽菜ちゃんはそう言うと大くんを強く抱き締めました。そんな2人を雛人形は優しく見つめているようです。
「あのお人形、笑ってるね」
「ほんとだ、ニコニコしてて可愛いね」
「お洋服も可愛いよね」
『ありがとう。十二単っていうのよ。きてみない?』
聞こえてきた声に、2人は驚いて顔を見合せます。部屋には2人しかいません。
『きてみない?』
話しかけてきたのはニコニコ笑顔のお雛様でした。
「着れるの?いいよ」
陽菜ちゃんと大ちゃんはこくりと頷きます。すると、陽菜ちゃんは美しいお雛様の衣装に身を包みます。可愛くなった陽菜ちゃんに大ちゃんは大興奮です。
『代わりに陽菜ちゃんのきていい?』
『いいよ!』
お雛様は陽菜ちゃんの洋服に着替えて嬉しそうに跳ねました。
「ありがとう、きてくれて」
陽菜ちゃんの服を着たお雛様が微笑むといつの間にか大ちゃんは眠ってしまいました。
・
大ちゃんはおばあちゃんに起こされて目を覚まします。その横では心配そうな陽菜ちゃんもいました。
「ああ良かった陽菜ちゃん!」
「どうしたの?夢でもみていたの?」
大ちゃんは陽菜ちゃんをぎゅうっと抱きしめます。
「あれ?陽菜ちゃんこんなとこにほくろがあったっけ?」
「ほくろって新しく出来たりするんだよ」
陽菜ちゃんがニコニコ笑ったので、大ちゃんも笑顔になりました。
赤い毛氈の上からお雛様が寂しそうに2人を見つめていました。
かわいいおひなさま 花田トギ @hanadatogitogi
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます