死神と魔女
紫月旅或
死神と魔女
横たわる老婆を見下ろし、
老婆の
「お前もこの
その容姿と
私は微動にもせず老婆の言う事を
「
つまらない、というように老婆は視線を外す。天井を見上げ、彼女はどう思っているのだろうか。
「私はお前を連れてゆく」
「
どうやら眠るつもりはないらしい。言葉が続いた。
「儂を天の国にでも、連れていってくれるのかい」
「否。お前がゆくのは地の底だ。
すると、老婆はケタケタと笑い始めた。それはもう、
「お前、お前は死神だ。なるほどそうか。儂はもうじき死ぬか」
寝台から起き上がると、ふらふらとした足取りで
「死神よ。儂はどれほどの人間を殺した」
「
「おお、おお。そうかそうか」
老婆の声は嬉しそうに弾む。
「
「麦を
老婆は一つの林檎と酒を
何の前触れもなければ、突然に老婆は林檎に
一瞬にしてそれらを腹の中へと収めた老婆は、再び寝台に横たわる。私が見下ろすと、老婆は語る。
「後悔などはしておらぬ。刹那の
「自らを呪殺するとは、何とも愚かしく人間らしい」
動かない老婆に、私は言った。
甘い酒の匂いに耐えかねて、私は開け放たれた窓から飛び出した。背後に認める気配は、これより私が導くべきその人。
しかし、その人は、あの口うるさい婆ではなく、何事も語らぬ人間には感知できぬ
私はそれを連れ、これより地の底へと向かうのであった。
死神と魔女 紫月旅或 @Shiduki-Roa
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