第4話 本当の話
「ふうん。なかなか良く出来た話だけど、ブッコローにしてはメルヘン過ぎるね」
僕の名前はR.B.ブッコロー。みみずくです。広告代理店に勤めて15年、同僚のPとのコンビで良い仕事をしてきたと自負している。そのPが、僕がいつもお守りのように持ち歩いている本(正確にはヒロコちゃんのノートだけど)について知りたい、と言うから教えてあげたのに。あいつ、全然信じてないな。
「それはそうと、この資料映像見ておいて。次の仕事関連だよ。今度はさ、外国の本屋を宣伝することになった。やり甲斐あるよ。何しろ、35年ぶりの書店らしいから」
35年ぶり。それはすごいな。でも、何だかどこかで聞いたことのあるような話だ…と思いながら、僕は再生ボタンを押した。テレビのニュース映像らしい。
「昨年、電子ノート監視禁止法の成立に伴い、空想することが全面的に解禁されました。そして、マニータ国内で物語と紙の書籍、及び文房具が復活しました。それを受けて、今年35年振りに書店が誕生したということですが、今後の抱負をお聞かせ下さい。まずは、広報担当のクー・ナヴェイさん」
「リョウ国王からご支援を賜り、開店の日を迎えることが出来ました。まず、店の名前ですが、リンドウ書店と申します。紙で出来た書物にも、物語という概念にも、文房具にも慣れていない、という方がまだまだ大勢おられると思います。ですから、まずは、思わず店に立ち寄りたくなるような、楽しい雰囲気作りを心掛けたいです」
「書籍担当のオヒラ・マーサさんはいかがですか?」
「皆さんも私もワクワク出来るような、楽しい本をたくさん紹介したいです。購入した本には、カバーを掛けて大切な本が傷むのを防ぎます」
「文房具担当のキーザ・ヒロコさんはどうですか?」
「文房具に慣れていない方でも、思わず手に取って使ってみたくなるような素敵な品物を、お店に置きたいと思っています」
「今お召しのイヤリングは店頭で扱っていますか?」
「書籍以外は文房具というのがこの書店の方針ですから、惹かれるものがあればイヤリングも仕入れます。でも、これは売り物ではないんですよ。私がリンドウ学園にいた時に、彫金の授業で作りました」
「では、この石も教材ですか?本番前に、舞台袖で光っているのを見ました。珍しいですね」
「ありがとうございます。この石は、教材ではありません。子供の頃に、森で出会ったみみずくがお餞別としてくれました」
「みみずくが?早速、物語ですか。頼もしいですね」
「本当に、みみずくに貰ったのです。一緒にお茶を飲みました。夢物語ではありませんよ」
画面の中のヒロコちゃんは、昔のままのささやくような小さな声でそう言った。そして、ふふふ…と静かに笑った。
ブッコローの本 内藤ふでばこ @naito-fudeb
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