こんにちは。内藤ふでばこです。
今回は「蝶となりにき我が薔薇の君」についてお話します。
この物語を書くきっかけとなったのは、ある本と出会ったことです。
その本とは『不死蝶 岸田森』(ワイズ出版映画文庫13 小幡貴一・田辺友貴 編)。
表紙の岸田さんの写真の眼差しに惹かれました。
岸田森さんは俳優です。
昭和14年10月7日に生まれ、昭和57年12月28日に食道癌が原因で亡くなられました。
享年43歳。早過ぎる死です。
この本の内容は、岸田さんのエッセイ、インタビュー記事、出演作品一覧(テレビ・映画・舞台・CM企画)が載せられていて、とても興味深いものでした。
あの俳優さんともお仕事をしておられたんだなぁ…と、私は楽しく読みました。
でも、この本のメインは…。
生前、岸田さんと親交のあった俳優仲間、仕事関係者、お兄さん、従姉妹の岸田衿子(詩人)・今日子(女優)姉妹…が、岸田さんとの思い出を語り尽くすというものでした。
皆さん、とても楽しそうに、今は亡き森ちゃん(しんちゃん)との記憶を辿っていて、とても惹きつけられるものがありました。
そして、彼・彼女らの岸田さんに対する深い愛情が私にも伝染し、私は岸田森さんのファンになってしまったのです。
岸田さんのことは、よく知らなかったのに。
岸田さんの出演映画は、今はもう見られないものも多いと思いますが、DVD化されているものをいくつか観ましたが…。
「もっと観たい」「若い時の作品を観たい」「テレビドラマを観たい」
という気持ちが高まるばかりでした。
そして私は「蝶となりにき我が薔薇の君」を書きました。
若き日の岸田森さんに、森さんの役を演じてもらえたらなぁ…という叶わぬ願いを込めて。
彼が深く愛した蝶と、彼が楽しく演じた吸血鬼と、彼の出演作品「血を吸う薔薇」を盛り込んで。
でも、仕上がった作品を読み返してみると、
岸田さんが「森さん」を演じるというよりは、岸田さんが「ルイ」を演じ、「森さん」は、私のイメージの中の岸田森さんそのものなのでは…と思うようになりました。
ちなみに。
私は、この『不死蝶』を読んで初めて詩人の長田弘さんを知りました。
彼は、岸田森さん、その友人である草野大悟さんと親交があり、彼らの死に際して詩を書きました。
岸田さんには「友人の死」、草野さんには「役者の死」。
どちらも『世界は一冊の本』という詩集に収められています。
どちらの本も機会があったら読んでみて下さいね。
内藤ふでばこ でした。