私が悪夢を見る決定的な理由

脳幹 まこと

大変なことになりますよ



 悪夢をよく見ます。

 自分でも「よく見るなー」と思うし、話をした知り合いも「見すぎでしょ」と返すくらい見るんです。


 ただ思い当たる節があり過ぎます。


 夢というのは、脳が情報を整理した際の副産物という説があって、トラウマになった出来事というのは、夢でよく登場するらしいのです。


 私が悪夢をよく見る理由は、学生の時に見た番組のせいなのだと自信を持って言えます。

 その番組の名前は……


「最終警告!たけしの本当は怖い家庭の医学」



 2000年代前半に始まり、放送終了後の今でも一部界隈にカルト的な人気を持つテレビ番組です。(最初は不定期の特番だったのですが、レギュラー化しました)


 タイトルからして嫌な予感しかしませんよね。

 こんなおどろおどろしいタイトルなのに、ゴールデンタイムだったんです。火曜日の午後8時から堂々とお茶の間で放映されていました。

(再放送もやっていて、土曜日の昼1時からでした)


 どんな内容だったかというと「様々な病気の症例を再現VTRで説明する(※)」という健康番組なのですが……


 死にます。

 それもバッタバタ死ぬ。

 内容が内容なのでVTRのストーリーも大体救いようがなく、「平穏な生活が突然病魔に奪われる」というケースの他、


「好きだった母親が亡くなる⇒強烈なストレスのせいで葬儀中に娘である患者も死亡」

「恐妻にいびられ続け、会社でも叱責される⇒我慢の限界に達して言い返した瞬間に発作、死亡」


 というドギツイものもありました。


 加えて、ジャパニーズホラーが隆盛をしていた時期だったのもあって、

 とにかく演出が怖すぎる。

 最終シーンなんか病室とは思えないほど暗いし、白い布が顔に被せられて、患者役の家族が泣き叫ぶんです。


 もう一度言います。これがお茶の間で流れていました。


 当時少年だった自分でも分かります。あれはゴールデンタイムでやっていいものではなかった。心霊番組よりも確実に恐かった。


 文字どおり病魔に襲われて、殺されてしまうんですから。


 しかも、殺しに来るのはフィクションの存在ではなく、実在する病気なワケですよ? 自分だって例外じゃないわけです。

 

 もちろん、この番組に苦情が出ないはずもありません。おそらく心気症(健康なのに「自分が病気なんじゃないか」と疑ってしまう状態)を引きおこした人もいるでしょう。

 まあ、良くも悪くも病気の恐ろしさを伝える効果はあったと思います。

(結果的には演出は相当マイルドになりました)


 深夜の放送だったら今でもワンチャンスあるような内容だったし、もしその時刻に見ようものなら、間違いなく眠れなくなっていただろうと思います。



……そういったテレビ番組を若いうちに摂取し続けた結果、無事に悪夢をよく見る体質となったわけですね。



※補足すると、毎週ごとに二例のVTRが出てくるんですが、症状を軽視したり、多忙で見逃した結果、徐々に末期症状になっていって、

 最後に致命的な発作が発生するという形式でした。死なずとも、身体が麻痺、失明といった後遺症が残るというパターンもありました。


「こんなことになる前にサインを見逃さないようにしようね!」という目的だったのでしょうが、ほとんど症状が出ないまま、最終局面に到達するような理不尽パターンもあったりしました……

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