地に足のついた転移系ファンタジー。終了したゲーム世界で少年は生きていく

ゲームやアニメやアイドルなど、虚構の世界にハマった人は多いと思います。他の人から見れば何をそんなに熱くなっているの? と思われがちですが、ハマっている当人は楽しいもの。喜怒哀楽が激しく動きますよね。
この作品は、終了したゲームの世界に主人公が転移するストーリー。
経験のある人はわかるでしょうが、虚構の世界だとしても、その世界の終了は自分の半身が失くなってしまったようなそんな寂しさを覚えますよね。
主人公である恒夜も、ゲームだからと割り切ることができずに転移することを選びます。
けれど恒夜には家族がいて、学校があります。
悩みます。
転移後の世界は、リアル。痛みもあれば恐怖もあり、うまくいかないこともある。シャワーを使うのにも一苦労。
ゲームをやめてコンビニでお弁当を買ってお風呂で汗を流せる、そんな日本社会とは違います。
現実だった世界(日本)が遠くなり、壊れかけのゲーム世界が現実になる。
交わっていた現実と虚構が集約し、切り離される。虚構世界がリアルになる。そのあたりの描写が地に足がついていて、お見事です。
また、執筆スキルで壊れかけの世界を修復していくという設定もよく練られていて、容易に世界を変えることはできません。
そんなハードルの高い世界だからこそ、脇役たちが光ります。彼らの頼もしさは、ゲーム終了後の過酷な世界を生き延びている強さでもあります。

物語はまだ始まったばかり。
神(ゲームを作った人)のいない世界で主人公たちがどのように生きていくのか。
目が離せません。

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