Chaos World Fantasìa -壊れかけの世界で、神様をさがして-

羽鳥(眞城白歌)

帰還編

序 世界が終わった日

[0-1]手紙、あるいは書置き


 誰よりも大切な、きみへ。


 きみがこれを読んでいるということは、おそらく私はずいぶん長く留守にしているんだろう。一ヶ月、いや半年、ひょっとして一年以上も音信不通になっているかもしれない。

 人生に不測の事態はつきものだから、万が一を想定して、私はこの手紙をきみに書き置こうと思う。


 この家、古書店は私が建てたもので私に所有権があるが、私の留守中はきみが好きに使ってくれて構わない。置いてある書物はどれも一般書で骨董こっとう的な価値はないし、古書というものはそれほど需要が多くもないので、管理が大変なら閉店にしてもいい。

 修繕や何かの購入などひとりでままならぬことがあれば、湖のほとりにある城を訪ねて事情を話せば内務官の方が力になってくれるよ。


 最後に、これが一番大切なことだ。どんな事情だろうと、どんな障害があろうと、私は必ず何らかの方法を見つけて、帰ってくると約束する。

 あるいは今の私とは似ても似つかぬ姿、年齢も種族も違ってしまうかもしれないが(この世界にはそういうケースがありがちだというのはきみも知っていることと思う)、それでも必ずここへ戻ってくるつもりだよ。


 この広大な世界サーバーに、同じ名前も持つものはただのひとりもいない。それが、神様の定める規約ルールだからだ。

 だから、どうか私の名前をおぼえていてくれないか。

 ただの通りすがりの隣人ではなく、きみにとってかけがえない家族、として。




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