そして、魔女は往く

　とある貴族が宗教によって統治する、城壁に囲まれた城塞都市でこの時代では致死性の高い疫病が蔓延し街中に死者が溢れる中、実際にはなんの効果もない粉末を求めときには暴力に走る民衆、いまいち状況を把握しきれずに防疫上危険な行為を行う役人、憐れむという感情すら持ち合せていない兵士、現実を受け入れられず祈るばかりで職務放棄する領主、事実を一部把握してはいるがどこか他人事なその娘、といったこの世の地獄が広がっていた。
　そんな最中、遠い地方で発展している医学を伝えにやって来たが、占いやおまじないとしか認識されず広めきれなかったちいさな魔女が、１つの街での任期を終え次の街へと旅立とうとしていた。
　そんな魔女の足元へ、彼女が来る前から医学を独学で学び、領主に睨まれて困っていた彼女を助けて下宿させ、その医学…続きを読む