少女は彼我の実力差を知る……

かみさん

圧倒的な差




 言い訳とは……そうせざるをえなかった事情を説明して了解を求めること。弁解。弁明。


 つまり、これからすることは言い訳じゃない。


「だって、必要なことだし」


 私が手を伸ばしたのは、同居している友人のタンス。その二段目。

その取手を掴み、ゆっくりと引き出す。すると、中から様々な色が姿を現した。


「これは相手の実力を図るため……だから必要な事なの」


 ゴクリと喉を鳴らし、その中の一つへ手を伸ばす。

 同時に聞こえてきた水の流れる音は、同居人がシャワーを浴びている証拠だ。


「よし、まだ大丈夫」


 ほっと息を吐き出せば、張り詰めていた糸が緩みそうになる。

 それを気合で押しとどめ、目的のものを取り出せば。


「こ、これが……」


 手に握られた二つの山。

その迫力に震えが止まらない。


震える手をどうにか動かし、空いた手を自身の服へ。

シュルシュルと布がこすれる音が微かに響き、一拍置いて上半身にかかる重みが無くなった。


「…………」


 無言で手に取ったものを身に着ける。

 そうして見下ろせば、隠すことが出来なかった自分の双丘が存在を主張していた。


「くっ……」


 ガクリとひざを折り、無念さに眉をひそめる。

 後悔してもすでに遅く、空虚さが胸を締めつけた。

 実際に見たことがあるのだから勝てないことは分かっていた。しかし、彼我の実力差がここまでだったとは……。


「私もまだまだ成長中だし……負けてないし……」


 自身を鼓舞し、震える足に力を込めてどうにか立ち上がる。

 その時だった。


「何してるの?」


「……っ!?」


 背後からの声に怖気が走る。

 そして、ゆっくりと背後へ視線を送れば、バスタオルを巻いた同居人の姿が。


「下着を忘れたから取りに来たんだけど……」


 動揺した様子の彼女。

その姿に、私は必死に言葉を探して。


「ち、違うの! ちょっと気になって」


「そ、そう……」


 一瞬、彼女の視線が私の胸に向いて遠い目になったのは見なかったことにしたい。

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少女は彼我の実力差を知る…… かみさん @koh-6486

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